岸滋彦

岸滋彦：才能と挫折、そして新たな挑戦の物語

岸滋彦氏は、1969年12月4日、滋賀県生まれの元騎手、そして現調教助手です。JRA調教師である宮本博氏は、岸氏の従兄にあたります。

厩務員からGIジョッキーへ

父親が厩務員であった影響を受け、岸氏は騎手を志し、1985年に競馬学校へ入学。岡潤一郎氏や内田浩一氏らと共に4期生として学びを深めました。1988年、栗東・梅田康雄厩舎からデビュー。初騎乗は中京競馬場で行われたレースで5着、続くレースで初勝利を飾ります。デビューイヤーは36勝を挙げ、新人騎手として大きな注目を集めました。

衝撃のエリザベス女王杯制覇とクラシック制覇

2年目の1989年、岸氏は20頭中20番人気という低評価のサンドピアリスでエリザベス女王杯を制覇。重賞初制覇とGI初制覇を同時に成し遂げました。19歳11ヶ月でのGI制覇は、当時2番目の若さでした。この勝利は、馬主の「初年度募集馬をGIに出走させたい」という希望と、岸自身の菊花賞騎乗予定のキャンセルという偶然が重なった結果でした。レースの実況は、岸氏自身も、陣営も、誰もが予想だにしなかった大金星に興奮し、驚きを隠せない様子でした。

翌1990年には、エイシンサニーで優駿牝馬を制覇。クラシック初制覇を果たし、2年連続の牝馬GI制覇によって「牝馬の岸」と呼ばれました。このレースでは、レースレコードを更新する圧勝劇を演じました。しかし、この年のオフシーズンにはスキー旅行中に騎手免許更新の手続きを怠るという失態を犯し、反省の意を示すため1ヶ月の騎乗自粛処分を受けました。

マイルCS連覇とビワハヤヒデ

1991年には年間69勝を挙げ、自己最多勝利を更新。ダイタクヘリオスとのコンビでマイルチャンピオンシップを制しました。翌1992年には同レースを連覇。シンボリルドルフ、オグリキャップ、メジロマックイーンに続く、6億円を超える獲得賞金を得る快挙も成し遂げました。

この頃、武豊氏、岡潤一郎氏と共に「関西の将来を担う一文字騎手」として高い評価を得ていました。そして、ビワハヤヒデの主戦騎手としての座も掴みます。ビワハヤヒデはデビューから3連勝を飾るなど、大きな期待を集めていました。しかし、朝日杯3歳ステークスでは惜しくも2着。その後、共同通信杯4歳ステークスでも2着に敗れ、馬主からの騎手交代要求を受け、ビワハヤヒデの主戦騎手を降板することになりました。

騎手引退後

ビワハヤヒデ降板後も1997年までは中堅騎手として活躍を続けましたが、落馬事故や交通事故による怪我の影響で騎乗機会が減少し、2003年に騎手免許の更新を行わず現役を引退しました。

引退後は、梅田康雄厩舎、北出成人厩舎を経て、現在は笹田和秀厩舎の調教助手として活躍しています。

岸氏の騎手としてのキャリアは、華々しい成功と苦い挫折を経験した波乱に満ちたものでした。しかし、その経験は、現在の調教助手としての仕事に活かされ、多くの若手騎手育成にも貢献しています。岸氏の歩みは、競馬界における努力と情熱の物語として、これからも語り継がれていくでしょう。

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