峠三吉

詩人 峠三吉

峠三吉（とうげ さんきち、1917年2月19日 - 1953年3月10日）は、昭和時代に活躍した詩人です。本名を三吉（みつよし）といい、日本共産党の党員でもありました。

生涯

実業家である父の仕事の関係で大阪府で生まれた後、すぐに広島へ移り住みました。幼い頃から気管支の病気に悩まされ、広島商業学校時代から詩作に励みますが、卒業後は病気療養のため、長期の療養生活を送ることになりました。この病は、生涯を通じて彼を苦しめることになります。

1945年8月6日、広島市で被爆。爆心地から3kmの地点で被爆し、その体験が後の彼の活動に大きな影響を与えました。

戦後は、広島を拠点に地域文化運動の中心人物として活動し、広島青年文化連盟の委員長に就任しました。また、広島県庁での勤務や雑誌『ひろしま』の編集に携わる一方で、1949年にはサークル「われらの詩の会」を発足させ、詩誌『われらの詩』を創刊しました。

1950年6月に朝鮮戦争が勃発すると、「われらの詩の会」は被爆地広島における反戦反核運動の拠点となります。そして、1951年には代表作となる『原爆詩集』を自費出版し、原爆の被害を訴え、その体験を広く世に伝えました。この自費出版版の表紙と挿画は、四國五郎が担当しました。

1952年3月、新日本文学会全国大会に出席するため上京する途中で喀血し、静岡赤十字病院に入院します。退院後は、再び精力的に活動を続けますが、1953年2月、持病の治療のため国立広島療養所に入院し、肺葉切除手術を受けました。しかし、手術中に容体が悪化し、14時間の苦闘の末、手術台の上で36歳の若さで亡くなりました。

峠の死後50年が経過し、彼の詩は著作権保護期間が満了したため、平和教材やインターネット上で広く閲覧できるようになり、多くの人々に読まれています。

原爆詩集『序』

『原爆詩集』に収録された『序』は、峠の代表作であり、原子爆弾をテーマにした詩の中でも特に名作として知られています。詩の一節である「にんげんをかえせ」という言葉は、広く知られており、この言葉がタイトルとして使用されることもあります。

朝鮮戦争時にアメリカ軍が原子爆弾の使用を検討しているというニュースを知った峠は、原子爆弾が安易に使われようとしていることに強い危機感を抱き、すべての文章をひらがなで記述することで、批判的な感情を表現しました。

この詩の一文「にんげんをかえせ」は、後に橘祐典監督が制作した原爆ドキュメンタリー映画のタイトルに引用されたり、木下惠介監督の映画『この子を残して』のエンディング歌詞として全文が引用されています。

1963年には、広島平和公園内に「にんげんをかえせ」の詩碑が建立されました。この詩碑のデザインは、峠の盟友であった画家・詩人の四國五郎が担当しました。また、1995年には、峠の出生地に近い大阪府豊中市の岡町図書館前にも「にんげんをかえせ」の詩碑が建てられました。

関連項目

原民喜
大田洋子
加藤卓男
平山郁夫
栗原貞子
四國五郎
御庄博実
広島市への原子爆弾投下

外部リンク

Web広島文学資料室　峠三吉　愛と平和に生きた詩人 - 広島市立中央図書館
峠 三吉：作家別作品リスト - 青空文庫

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