橘祐典

橘祐典（たちばな ゆうてん）

日本の映画監督、橘祐典（本名:橘裕彦）は、1932年10月17日に東京で生まれ、2010年9月22日に77歳で亡くなりました。彼は、反戦や労働運動をテーマにした社会派作品を数多く手がけたことで知られています。

生い立ちとキャリア

橘は、出版業を営む家庭に生まれ、幼少の頃から映画に深い関心を持っていました。東京都立新宿高等学校を卒業後、今井正や山本薩夫といった著名な監督の下で助監督を務め、その後、独立系プロダクションを転々としました。1956年には、三井芸術プロの記録映画『働く少年のねがい』で初監督を務め、1966年には青銅プロの設立に参加しました。

代表作と受賞歴

1972年に監督した『どぶ川学級』は、製鉄所の青年労働者との交流を通じて不良少年が更生する物語で、モスクワ映画祭で文部大臣賞を受賞しました。この作品は、労働者による私教育の実践を描いたことで、教育界からも高い評価を受けました。1976年には、岡本孝二監督によって続編『新どぶ川学級』が制作されました。

その他にも、1979年の国際児童年記念映画『東京大空襲 ガラスのうさぎ』でインド児童映画祭金の象賞、1982年の原爆被害記録映画『にんげんをかえせ』ではアメリカン･フィルムフェスティバルブルーリボン賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。また、沖縄戦開戦40周年記念映画『戦場ぬ童』は教育映画祭優秀賞に輝きました。

社会派作品

橘は、社会問題に深く切り込んだ作品を多く制作しました。電電公社（現NTT）の合理化反対闘争をモチーフにした『母さんの樹』（1986年）や、米軍NLP基地設置に揺れる三宅島を舞台としたドキュメンタリー映画『怒りの三宅島』（1987年）などがその代表例です。これらの作品を通じて、社会の矛盾や問題を提起し、観客に深い問いを投げかけました。

晩年

晩年は、プロレタリア作家小林多喜二の半生を描いたドキュメンタリー映画『時代を撃て･多喜二』（2005年）の脚本を担当しましたが、2010年9月22日に心筋梗塞で逝去しました。

監督作品一覧

『働く少年のねがい』（1956年）
『炎と海と少年』（1963年）
『Mu-2』（1965年）
『ある保線所の記録』（1968年）
『沖縄』（1970年）
『牛鬼たいじ』（1970年）
『どぶ川学級』（1972年）
『教科書“百年”』（1973年）
『教室205号』（1974年）
『兄から弟へ』（1974年）
『あした花火』（1977年）
『金大中事件･告発』（1977年）
『東京大空襲 ガラスのうさぎ』（1979年）
『にんげんをかえせ』（1982年）
『戦争･子どもたちの遺言』（1984年）
『戦場ぬ童』（1985年）
『母さんの樹』（1986年）
『怒りの三宅島』（1987年）
『染と織』（1987年）
『続怒りの三宅島』（1988年）
『証言･言論弾圧横浜事件』（1990年）
『木』（1990年）
『ポリゴン』（1991年）
『うちなー旅』（1994年）
『ベトナムのダーちゃん』（1994年）

関連人物

今井正
山本薩夫
藤原杉雄
* 小林多喜二

橘祐典は、その作品を通じて、社会の不条理に立ち向かい、人々に希望と勇気を与えた映画監督でした。

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