島倉二千六

島倉 二千六（しまくら ふちむ）

島倉二千六は、日本の特撮映画において、その独特な背景アートで広く評価されている画家です。1940年10月5日に新潟県水原町で生まれ、幼少期から絵画に親しんできました。中学時代には早くも新潟県の展覧会で入選し、その後も文部大臣賞や郵政大臣賞を受賞するなど、才能を早くから発揮します。中学校卒業後には看板屋で働き、1957年に兄の勧めで東京へ上京し、独立プロに入社しました。

特撮映画の道を歩むことになったのは、1958年の映画『怒りの孤島』での背景美術からです。1959年には『日本誕生』の現場を見学し、特撮技術課長の末安昌美に誘われて1960年から東宝で契約社員として働くことになりました。当初は合成作画を担当し、鈴木福太郎の助手として背景美術に携わります。鈴木の指導を受けつつ、彼自身の技術も磨き、特に雲の描写においてその才能が開花しました。

彼は、1981年に東宝を退社した後も独立して作品を制作し続け、特撮映画やテレビ番組、CMなど幅広い分野で背景美術を手がけるようになりました。彼は「アトリエ雲」という工房を設立し、弟子にも新しい世代のアーティストたちが育っていきました。特に妹尾河童の息子妹尾太郎は彼の弟子の一人として知られています。

島倉は、特撮映画の背景画家としてのキャリアのなかで、いくつかの著名な賞を受賞しています。1992年には日本アカデミー賞協会特別賞、1996年にはNHKスペシャル「生命」で国際エミー賞、2005年に文化庁映画功労賞、2008年には倉林誠一郎記念賞を受賞しました。2015年には内閣総理大臣賞も手にし、業界からの信頼と評価は非常に高いものがあります。

また、彼の作品のスタイルには独自のエピソードが数多く存在します。新潟時代には美術教師の小林知己から指導を受けており、彼の紹介で上京して東宝に入社したとされています。島倉が初めて東宝の現場を訪れた際、鈴木の描いた雲の絵を見て驚愕し、まるで写真のように見えたという記憶があります。特に島倉は、鈴木が私用で休んだ際、彼の雲を描くという貴重な機会に恵まれ、円谷英二から高い評価を得たことで、自信を深めていきました。

円谷作品の青空は独特の色合いを持ち、その絵は遠近感を出す工夫がされています。また富士山を描くことが多く、描き方を習得した島倉は、資料を見ずとも裾野を描けるほどに至りました。

自身のアートにも積極的に取り組むようになったのは1993年ごろからで、個展や版画展も各地で開催しています。著書もあり、2021年には『特撮の空 島倉二千六、背景画の世界』を出版。幅広い経験と知識を生かし、後進を指導し続ける彼の姿勢は、多くのアーティストに影響を与えています。

島倉二千六の作品は、ただ美しいだけでなく、特撮の魔法を支える大切な要素として多くのファンに愛されています。

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