島津久寛 (都城家)

島津久寛：幕末を駆け抜けた都城島津家の当主

島津久寛は、1859年（安政6年）、薩摩藩士として、そして都城島津家26代当主として誕生しました。幼少の頃から、激動の時代の中を生き抜いた彼の生涯は、多くのドラマを秘めています。

4歳の時に家督を相続した久寛は、祖父である久本を後見役として、藩政の舵取りを担います。しかし、その年齢と久本の高齢を考慮し、叔父である北郷資恭を代理として、鹿児島藩東境の防衛を任せます。

1863年（文久3年）の薩英戦争では、陸戦に備え、家臣600名余りを鹿児島へ派遣。さらに、都城領飛地の志布志湾沿岸にも兵を配置するなど、綿密な防衛体制を整えました。翌年には、島津宗家の命を受け、三条実美ら五卿の警護という重要な任務を担い、大宰府にて13ヶ月にわたる警護を行いました。

1866年（慶応2年）には、長崎に家臣を派遣し、英国式兵術の修練と洋式銃の購入を実現。帰国後には都城に練兵場と射的場を開設し、兵士の訓練に励みました。小銃21小隊、大砲1隊を編成するなど、近代的な軍事体制を整えていく一方、領内では保守派と尊皇派が対立し、厳しい処分が行われた事件（誠忠派崩れ）も発生しました。この事件は後に島津宗家によって取り消されています。

戊辰戦争では、薩摩藩の一員として、都城一番隊と二番隊を戦闘に投入。鳥羽・伏見の戦いから江戸城明け渡し、さらには北陸地方での戦闘にも従軍し、大きな戦果を収めました。都城の武士たちは、仙台、石巻へと進撃、戦功を挙げました。一方で、佐幕派であった延岡藩への備えとして日向細島にも兵を派遣しました。戊辰戦争での功績により、都城島津家は後に男爵位を授けられています。

しかし、戦争中の悲劇もありました。「六士斥候事件」と呼ばれる事件では、夜間斥候中に新選組と遭遇した6名の兵士が発砲を受けながらも交戦せず、卑怯だと非難され、自刃するという痛ましい出来事が発生しました。この事件は、通常の作戦行動に起因するものであり、彼らが自らの責任を感じた結果だったと考えられています。

1869年（明治2年）、版籍奉還に伴い私領を返上し、鹿児島に移住しました。石高3万9千6百余石、領民2万843人を治めていた領地を手放したのです。しかし、旧領民の強い要望を受け、都城地頭として三島通庸が赴任するも、旧領主を慕う人々の反発に遭い、混乱を招きました。

1877年（明治10年）の西南戦争では、都城地域から西郷軍に1550名もの兵士が参加。久寛自身は中立を保ち、島津宗家と共に桜島へ避難しました。

1879年（明治12年）、旧家臣らの要請を受け、鹿児島から都城へ復帰。新たな邸宅を構え、再び都城の地に根を下ろしました。しかし、1884年（明治17年）、わずか26歳で病死しました。嗣子なく、遺言により従弟が家督を相続しました。1907年（明治40年）には従四位を追贈されています。

島津久寛の生涯は、激動の時代を生き抜いた一藩士、そして領主としての苦悩と葛藤、そして功績を物語るものです。彼の存在は、幕末から明治へと移り変わる日本の歴史において、重要な一端を担っていたと言えるでしょう。

もう一度検索