志布志湾

志布志湾について

志布志湾（しぶしわん）は、九州南部の大隅半島東岸に位置する円弧状の美しい湾です。その長い歴史の中で、有明浦と呼ばれたり、戦前には有明湾とも名付けられていたことがあります。湾は鹿児島県肝属郡肝付町火崎から宮崎県串間市の都井岬まで広がり、その総延長はおよそ80kmです。湾口は約20km程度と比較的広く、魅力的な海流と自然環境が特徴です。

自然と地理

湾の南西側に位置する肝付町の湾口近くには内之浦湾という支湾が存在しています。湾の内部には美しい砂浜が広がる一方で、湾口の南岸や都井岬周辺では山地が迫り、変化に富んだ自然景観となっています。また、志布志湾のほぼ中央には、無人島の枇榔島（びろうじま）が沖合5kmにあり、ここには亜熱帯性植物が自生し、国の天然記念物に指定されています。夏には海水浴場やキャンプ場として利用されることもあり、志布志港からは定期船も出ていましたが、現在は休業中です。

産業の発展

肝付町側の湾口には1970年に、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた宇宙航空研究開発機構の内之浦宇宙空間観測所があります。この施設は、地域の産業や技術の発展に寄与してきました。また、1968年には新大隅開発計画が立てられ、沿岸部の一部埋立が提案されました。この計画は自治省出身の金丸三郎知事の提唱によるものです。さらに、志布志湾を共同原油輸入基地の候補地として選定したことで、地域の開発は農業中心から工業主体へと移行し、志布志湾臨海工業地帯の形成が進められました。

この開発計画は1968年10月に公表され、計画されていた内容は、3600ヘクタールの埋め立てによる石油化学コンビナートや鉄鋼業の誘致、さらには3万1000人の雇用創出を目指すものでした。しかし、地元住民の反対運動や議会の騒動が続き、最終的には計画が縮小されました。1976年には再度計画が見直され、2次試案として1160ヘクタールの埋め立てが提案されましたが、実現することはありませんでした。その後、志布志港周辺には漁業用の物流基地や、石油備蓄基地が設けられるにとどまりました。

太平洋戦争と歴史的背景

太平洋戦争中には、志布志湾はアメリカ軍の上陸予定地と見なされ、軍事的な防御が強化されました。内之浦砲台や高崎砲台が整備され、一定数の砲台が設置されたほか、湾内の島々にも武装が施されました。特攻艇震洋の基地も設置され、戦時中の緊迫した状況がうかがえます。これらの歴史的背景は、現在の志布志湾の文化や観光にも影響を与えています。

まとめ

志布志湾は、その自然の美しさとともに、歴史的な背景や産業の発展が絡み合った地域です。地元住民や観光客にとって、その魅力は尽きることがありません。湾を訪れることで、九州南部の自然や歴史に触れる貴重な体験が得られることでしょう。

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