島津久武 (壱岐)

島津久武（しまづ ひさたけ）

島津久武は、江戸時代後期に活躍した薩摩藩の家老です。生年は不明ですが、嘉永3年4月28日（1850年6月8日）に亡くなりました。通称は初め郷十郎、後に頼母、壱岐と称しました。

家系と家督

島津久武は、島津久謫（頼母、後に相馬）の次男として生まれました。島津準四男家は、一所持格の家柄であり、久武はその当主となりました。この家は、島津久房の同母兄である久記を家祖としています。しかし、久記の家督は、肝付兼柄の子である久通、そして入来院明雅の子である久馨へと受け継がれ、久武は久馨の孫にあたります。

次男として生まれた久武は、本来は島津姓と「久」「忠」の字を使用することが許されず、平屋姓を名乗り、「記」の字を用いていました。しかし、若年寄兼谷山郷地頭であった父が病気で隠居したため、兄の久謐に代わって家督を相続することになりました。

薩摩藩での活躍

久武は、家督相続後、大目付や江戸藩邸詰めの家老を歴任しました。準四男家としては初めての家老就任であり、藩内での信頼も厚かったことが伺えます。また、薩摩国吉田郷、郡山郷、国分郷、加世田郷の地頭を兼職し、国分郷地頭と加世田地頭の時には大口郷も預かりました。弘化3年の時点での石高は158石余でした。

お由羅騒動と最期

家老として活躍していた当時、薩摩藩では世子を巡る対立が激化していました。第10代藩主島津斉興の側室お由羅の方が、斉興の五男である忠教を擁立しようとしたため、藩内は世子斉彬を支持する派閥と忠教を支持する派閥に分かれていました。

久武は、斉彬派の筆頭格として行動しました。しかし、嘉永2年（1849年）に斉彬派の近藤隆左衛門らによるクーデター計画が露見すると、翌嘉永3年（1850年）、その連座によって家老を罷免され、隠居を余儀なくされました。

さらに、久武は剃髪させられた上、島津姓と通字の「久」を没収されて平屋に改姓させられ、準四男家の庶流として扱われることになりました。その後、切腹を命じられ、その生涯を閉じました。

年譜

文化14年5月13日：父の島津相馬が病気を理由に若年寄および谷山郷地頭を辞任
文化15年1月11日：薩摩国吉田郷地頭に就任
天保4年1月11日：吉田郷地頭から郡山郷地頭に転任
天保7年：郡山郷地頭から国分郷地頭に転任
弘化3年8月25日：国分郷地頭から加世田郷地頭に転任

系譜

父：島津久謫
母：不詳
妻：伊勢平四郎の娘
養子：島津久隆（兄島津久謐の子）

参考文献

島津久光写『君家累世御城代家老記』（「鹿児島市史三」掲載）
『諸郷地頭系図』
『薩藩政要録』
「鹿児島県史料・島津斉宣、斉興公史料」
「薩陽名鑑」天保11年3月写し（鹿児島県立図書館所蔵）

島津久武は、激動の時代を生きた薩摩藩士の一人であり、その生涯は藩内の権力闘争に翻弄された悲劇的なものでした。

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