島津忠仍

島津忠仍（しまづ ただなお）

島津忠仍は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将で、薩摩国島津氏の庶流に位置します。初めは東郷氏を名乗っていましたが、後に島津氏に復姓しました。彼の生涯は、戦乱の世を背景に、数々の転換期を迎えることになります。

生い立ちと東郷氏への養子入り

忠仍は、島津貴久の四男である島津家久の次男として生まれました。しかし、天正5年（1577年）に東郷重尚の養子となり、東郷重虎と名を改めます。この養子入りは、彼の人生における最初の大きな転換点でした。幼少期から武家の血筋を受け継ぎ、武将としての道を歩み始めます。

水俣出陣と九州征伐

天正8年（1580年）には、わずか7歳で父・家久に従い水俣出陣に参加しました。幼いながらも戦場を経験し、武士としての心構えを培いました。天正15年（1587年）、豊臣秀吉による九州征伐が始まると、高城が落城し、忠仍は島津領へと退却します。この時、義父である東郷重尚が病没し、忠仍はまだ少年であったため、父の領地である日向国佐土原に戻り、自領では家臣らが籠城しました。

文禄・慶長の役と島津氏への復姓

文禄元年（1592年）、忠仍は実兄の島津豊久に従い、文禄・慶長の役に参加し朝鮮へ渡海します。この際、島津義弘の命により東郷氏から島津氏に復姓し、名を島津忠直と改めました。しかし、陣中で病を発症したため、佐土原へ帰還することになります。忠仍が「忠仍」と表記されるようになった年代は、明確にはわかっていません。この復姓は、彼の家系が島津氏の一員としての意識を強く持つようになったことを示唆しています。

関ヶ原の戦いと隠居

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いで兄の豊久が戦死すると、豊久に嫡子がいなかったため、慶長9年（1604年）に忠仍にその遺領を継ぐよう命が下ります。しかし、忠仍は病身を理由にこれを辞退し、自身の娘婿である喜入忠続の子・忠栄に遺領を継がせ、自身は知行1,000石で大隅国三躰堂村に隠棲しました。この隠居は、彼の人生における大きな転換点であり、武将としての活動に終止符を打つこととなりました。

死去とその後

元和7年（1621年）、忠仍は病死しました。彼の跡目は嫡男の忠昌が継ぎましたが、寛永9年（1632年）に島津姓を辞退する旨を上申し、翌年に受理されたため東郷氏に復姓し、東郷昌重と称しました。さらに、忠昌は樺山久尚の養子となったため（樺山久広と称する）、次男の重経が跡目を継ぎました。重経と忠仍の三男である重頼兄弟も東郷姓に復し、重頼の子である源四郎忠辰は本城氏を名乗りました。このように、忠仍の家系は、島津氏から東郷氏へと再び姓を変え、それぞれの道を歩むことになります。

島津忠仍は、戦国時代から江戸時代初期にかけての激動の時代を生き抜いた武将であり、その生涯は、当時の社会情勢や武士の生き様を映し出す鏡であると言えるでしょう。

参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
稲葉行雄　『「さつま」歴史人名集』（高城書房出版）ISBN 4-924752-28-2

もう一度検索