島津貴久

島津貴久（しまづ たかひさ）

島津貴久は、戦国時代の武将で、薩摩の守護大名であり、島津氏第15代当主です。島津氏中興の祖である島津忠良（日新斎）の嫡男として生まれ、「島津の英主」と称えられています。島津氏第9代当主・島津忠国の玄孫にあたり、第14代当主・島津勝久の養子となり、家督を継承しました。薩摩・大隅・日向の守護職を歴任し、官位は従五位下修理大夫、陸奥守です。

生涯

家督相続

永正11年（1514年）、島津忠良の長男として誕生しました。当時の島津氏は、一門や分家の自立化が進み、宗家は弱体化していました。そのため、第14代当主・島津勝久は忠良を頼り、大永6年（1526年）に貴久を養子に迎えました。翌年、勝久は隠居し、貴久が正式に家督を継承しました。

島津実久の台頭

薩州家当主・島津実久は、貴久の家督相続に不満を持ち、反旗を翻しました。実父の忠良が鎮圧に当たる一方で、実久方は伊集院城や谷山城を攻略し、一時的に優位に立ちました。勝久は守護職の返上を宣言し、貴久との養子縁組を解消しました。しかし、勝久と家老の対立は深刻化し、家老たちは実久を擁立してクーデターを起こし、勝久を追放しました。この間、忠良は薩摩半島の国人衆を味方につけ、勢力を拡大しました。貴久は天文2年（1533年）に初陣を飾り、実久軍を破っています。

薩摩統一

天文5年（1536年）、忠良・貴久父子は反撃を開始し、伊集院城を奪還、翌年には鹿児島に入城しました。その後、加世田城を攻略し、紫原の戦いで実久方を打ち破りました。実久は出水に撤退し、勝久は豊後国へ亡命しました。これにより、貴久は薩摩守護としての地位を確立し、戦国大名としての道を歩み始めました。

しかし、貴久の台頭は島津一門や国人衆の反発を招き、13氏が勝久の子を擁立して反乱を起こしました。貴久はこれを撃退し、和睦によって連合を崩壊させました。天文14年（1545年）、朝廷から薩摩の国主として公認され、豊州家や肝付氏も従属しました。天文22年（1553年）には実久が病死し、後を継いだ義虎も貴久を認めました。

天文19年（1550年）、貴久は内城を築いて本拠を移し、天文21年（1552年）には修理大夫に任じられました。また、嫡男・忠良（後の義久）が将軍から偏諱を賜り、島津氏一門も貴久を中心とした結束を誓いました。これにより、貴久は名実ともに薩摩の守護として認められました。

大隅合戦

大隅は国人衆が強く、島津氏の支配が及ばない地域でした。天文23年（1554年）、加治木城主をめぐり、蒲生氏らが反乱を起こしました。貴久は岩剣城を攻めて蒲生軍を撃破し、大隅西部を手中に収めました。さらに、帖佐平佐城や松坂城を攻略し、蒲生氏を追い詰めました。

晩年

永禄9年（1566年）、貴久は剃髪して家督を長男の義久に譲り、隠居しました。元亀2年（1571年）、加世田にて死去しました。享年58歳。大正9年（1920年）、従三位が贈られました。

人物・逸話

貴久は、旧領三州（薩摩、大隅、日向）の回復は果たせませんでしたが、その遺志は息子たちに受け継がれました。義久は日向の伊東氏を破り、肝付氏を従属させ、島津氏は三州の太守としての地位を確立しました。貴久は、父・忠良とともに「中興の祖」と並び称されています。

また、貴久は琉球やポルトガルとの交易を積極的に行い、鉄砲や洋馬を導入しました。フランシスコ・ザビエルにキリスト教の布教を許可しましたが、後に禁止しました。史料上、鉄砲を実戦に初めて使用した戦国大名であるとされています。


島津貴久は、戦国時代の激動の中で、島津氏の勢力を拡大し、九州制覇への足掛かりを築いた名将でした。

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