島津忠秀 (越前家)

島津忠秀（しまづ ただひで）

島津忠秀は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将であり、歌人としても名を残しています。宇宿氏、宇留氏、信濃島津氏赤沼家の祖として知られています。

生涯

信濃国赤沼郷に地頭職を有し、諏訪大社の御射山祭では頭役を務めました。武将としては、元弘3年（1333年）に足利高氏が六波羅探題を攻撃した際、六波羅探題方の将として、太政官庁や神泉苑周辺の守備にあたりました（『太平記』巻第九）。

六波羅探題滅亡後は、室町幕府に帰順したと考えられています。康永4年（1345年）には、天龍寺供養の際に導師を務めた夢窓疎石の天蓋の執綱を務めた「島津常陸前司」も、忠秀である可能性が高いとされています（杉本雅人『越前島津氏－その事歴と系譜』第6章）。

島津忠秀は、祖父の島津忠景、父の忠宗と同様に、和歌の才能にも恵まれていました。『続千載和歌集』や『続後拾遺和歌集』にその歌が収録され、『武家百人一首』にも選ばれています。

作品

忠秀の歌として特に知られているのは、以下の歌です。

いにしへの　野中の清水くまねども　思ひ出てぞ袖ぬらしける

この歌は、『続千載和歌集』の雑下と『武家百人一首』に収録されています。古の野中の清水を汲みに行くことはないが、その清水を思い出すと、涙で袖が濡れてしまう、という情景が描かれています。

島津忠秀は、武将としての活動と並行して、歌人としても才能を発揮し、後世に名を残しました。彼の和歌は、当時の人々の心情や自然への感性を伝えてくれる貴重な資料となっています。

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