島津忠景

島津忠景について

島津忠景（しまづ ただかげ）は、鎌倉時代中期に活躍した武将であり、同時に優れた歌人でもありました。鎌倉幕府の御家人として、薩摩国知覧院（現在の鹿児島県南九州市）の地頭を務めました。また、但馬国朝来郡粟鹿大社の地頭も兼務していました。

生涯

忠景は、学芸に秀でており、鎌倉幕府6代将軍・宗尊親王の側近として重用されました。廂衆、門見参衆、御格子上下結番、昼番衆など、御所内の重要な役職を歴任しました。特に和歌の才能に恵まれ、宗尊親王や二条為氏らが主催する歌会や連歌会に頻繁に参加しました。歌合では、源親行との勝負にも勝利し、当時の歌壇で武家歌人としての地位を確立しました。

宗尊親王からの信頼は非常に厚く、『吾妻鏡』には、親王の私的な行動にもしばしば同行する様子が記録されています。その活躍ぶりは、兄の忠行や本宗家の忠時・久経らと比較しても際立っていました。また、蹴鞠にも造詣が深く、旬御鞠奉行にも選ばれています。

文永2年（1265年）には検非違使に任じられ、その誠実な人柄は、文永3年（1266年）の宗尊親王更迭をめぐる騒動で際立ちました。多くの近臣が親王を見捨てて逃げ出す中、忠景は数名の側近と共に御所に留まり、その忠義心は『北条九代記』などで高く評価されています。翌年には叙爵し、晩年は六波羅探題に転出し、京都で活動していたと推測されています。

正安2年（1300年）に60歳で亡くなりました。彼の作品は、『続古今和歌集』、『続拾遺和歌集』、『新後撰和歌集』、『玉葉和歌集』、『続千載和歌集』、『続後拾遺和歌集』、『新千載和歌集』、『新拾遺和歌集』、『新続古今和歌集』など、多くの勅撰和歌集に収録されており、その歌才は後世にまで伝えられています。

主な作品

いか様に　寝て明せとて侍人の　来ぬだにあるを秋風ぞ吹く（『続古今和歌集』巻十二 恋歌二）
置く露を　いかにしほれとふし衣　ほさぬ袂に秋のきぬらむ（『続古今和歌集』巻十六 哀愁歌）
この歌は、父忠綱の死を悼んだもの、または母の死を悼んだものとする説があります。
夜舟こぐ　ゆらの湊の潮風に　おなじとわたる秋の月影（『続拾遺和歌集』巻第五 秋下）
いつはりの　心あらじと思ふこそ　たもてる法のまことなりけれ（『新後撰和歌集』巻第九 釈教）
山里に　しばしは夢もみえざりき　なれてまどろむ峯の松かぜ（『玉葉和歌集』巻第十六 雑三）

系譜

島津忠景は、島津忠綱の三男として生まれました。本姓は惟宗氏です。兄に三郎忠行、四郎忠泰がおり、異母兄弟とする見解もあります。弟には六郎忠頼、七郎定賢、安芸守忠氏らがいます。子孫には、知覧氏や宇宿氏など薩摩国の名族、越前国に土着した一族（島津忠信ら）、信濃国に土着した一族（赤沼家島津氏）などがいます。

島津忠景は、武将としての忠義心と歌人としての才能を兼ね備えた、鎌倉時代を代表する人物の一人と言えるでしょう。

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