島津用久

島津用久：薩州家初代当主の生涯

島津用久（しまづ もちひさ）は、室町時代に活躍した武将であり、薩摩国（現在の鹿児島県）の有力大名である島津氏の分家、薩州家の初代当主です。彼は、島津宗家8代当主・島津久豊の次男として、応永18年（1411年）に誕生しました。

薩州家の成立

用久が薩摩守を称したことから、彼の家系は「薩州家」と呼ばれるようになりました。この薩州家は、後に島津氏の有力な分家として、歴史に名を残すことになります。

家督をめぐる内紛

兄である島津宗家9代当主・忠国は、家督を相続した後、領内で頻発する反乱に手を焼いていました。自信を失った忠国は、妻の実家に隠居してしまいます。この混乱の中で、用久は守護代として反乱勢力を鎮圧し、領内をまとめあげたとされています。しかし、当時の文書を詳しく分析すると、用久は守護の書式で文書を発給しており、守護代の書式が見当たらないことから、実際には島津氏の家督そのものを譲り受けていたと考えられています。

しかし、家督の譲渡は一時的なものと考えていた忠国と、家中からの人望を集め当主としての地位を固めつつあった用久の間で、次第に対立が深まっていきました。更には、忠国と用久のそれぞれを支持する一揆も形成され、事態はより複雑化していきます。最終的に内紛は用久の勝利に終わりますが、その後の展開が彼の運命を大きく左右することになります。

幕府との対立

嘉吉元年（1441年）、足利義教の弟である義昭が島津領に逃げ込んできました。この討伐に、用久は積極的な姿勢を見せませんでした。代わりに忠国が討伐に当たったことで、室町幕府が介入してきます。これにより、用久は一転して討伐の対象とされてしまいます。これに反発した用久とその支持者は激しく抵抗しましたが、文安5年（1448年）に和解することになります。

その後

和解後、忠国は阿久根や出水などを与えて、用久との関係を修復させます。しかし、一方で忠国は家臣との対立を深め、長禄2年（1458年）頃には家臣の間で用久を擁立して忠国を追放する計画もあったとされています。しかし、その計画が実現する前に、用久は長禄3年（1459年）2月29日に死去しました。享年49歳でした。

島津用久の生涯は、室町時代の地方武将の複雑な立場をよく表しています。彼は、守護代として内乱を鎮圧し、一時は島津氏の家督を掌握しましたが、宗家との対立、幕府の介入といった政治的な動きに翻弄されることになります。彼の死後、薩州家は島津氏の中で独自の勢力を保ちながら、戦国時代へと進んでいくことになります。

参考資料

新名一仁『室町期島津氏領国の政治構造』（戎光祥出版、2015年）ISBN 978-4-86403-137-0
「永享・文安の薩摩国〈国一揆〉-薩摩国山北国人の反島津闘争-」（『九州史学』122号（1999年））
「嘉吉・文安の島津氏内訌」（『史学研究』235号（2001年））
「室町期島津氏〈家中〉の成立と再編」（『日本史史料研究会論文集2 戦国・織豊期の西国社会』（2012年））

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