島薫

島 薫について

島 薫（しま かおる）は、1897年に生まれ、1977年に亡くなった日本の著名な医師であり、特に広島市の医療界に多大な影響を与えた人物です。彼は原子爆弾投下時に爆心地にあたる場所に「島病院」を開院し、さまざまな医療活動を通じて地域社会に貢献しました。

来歴

島は現広島市安芸区中野に生まれました。1916年に広島県立広島中学校を卒業し、その後旧制大阪医科大学に進学、1924年には医学を取得しました。彼は、その後ドイツやアメリカで医療の研修を行い、先進的な医療技術を学び続けました。

1933年、島は広島市の中心部に「島病院」を設立しました。この病院は、当時最先端の医療設備を備えており、特に外科分野での活動に力を入れていました。さらに彼は、アメリカのセント・メアリーズ病院の経営方針に触発され、低価格での医療サービスを提供することを目指しました。島病院は迅速に地域住民に受け入れられ、外科外来が少なかった当時、それは多くの患者で賑わいました。

彼は治療を受けることができない患者に対しても温かな配慮を示し、返礼として地元の人々から農作物を受け取ることもありました。このように島は、広島の外科医療のリーダーとしての地位を確立していきました。

戦争と原爆投下

1945年の8月6日、広島に原子爆弾が投下されました。この日は、島が甲山町での出張手術に出向いていたため、爆心地にいた島病院は壊滅的な被害を受けました。島は急ぎ帰還し、病院の状況を確認しましたが、多くの患者や看護婦を失ってしまいました。

その後、彼は市内の臨時救護所で傷ついた人々の治療に尽力し、また島病院の焼け跡で行方不明となった患者やスタッフの安否を確認することにも努めました。多くの遺族に対しては、亡くなった人々の代わりに一握りの土を持ち帰るようにと伝えるなど、心のこもった配慮を示しました。

戦後の医療活動

1948年、島は再び島病院を再建し、その後も被爆者の医療に全力を尽くしました。この時期、原爆による健康影響に関する情報がほとんどない中で、彼は他の医師たちとともに新たな知識を求め続けました。原爆乙女が話題となる中で、広島で外科手術を行える医師の必要性が叫ばれるようになり、島はその中心人物となりました。

その後、1953年には広島原爆障害対策協議会（原対協）の設立に貢献し、最終的には原爆医療法が制定されるきっかけを作りました。また、1971年から1973年にかけては、広島信用金庫の理事長も務めました。

最後の年

島は1977年に79歳で亡くなりました。彼の息子が島病院を継承し、2016年には彼の遺影が国立広島原爆死没者追悼平和祈念館に登録されました。これにより、島とその病院に関わった人々の貴重な記録が今に伝えられることとなりました。彼が残したものは、単なる医療以上に、戦争の悲劇を乗り越える人間の強さや絆を示すものとして、将来にわたり語り継がれるべきでしょう。

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