崔亮 (明)

崔亮（さい りょう）

崔亮は、元末から明初にかけて活躍した官僚で、字を宗明といい、本貫は真定府藁城県にありました。彼の生年は不明ですが、1370年に亡くなっています。

生涯

元代には江浙行省の官吏を務めていました。朱元璋の軍が旧館に迫ると、崔亮はこれに降伏し、中書省礼曹主事に任じられました。彼は即位や大祀における様々な礼儀を定め、丞相の李善長がこれを朱元璋に報告したことで、その名を知られるようになりました。その後、済南府知府に転任しましたが、母親の死去に伴い喪に服すため一時帰郷しました。

洪武元年（1368年）の冬、礼部尚書の銭用壬が退任すると、崔亮が後任として礼部尚書に任命されました。彼は、銭用壬が議論していた礼制について、古来の文献を引用しながら詳細に規定しました。その考証の正確さは銭用壬を凌ぐものがあり、廟や祭祀だけでなく、朝賀山呼、百司箋奏、上下の冠服、殿上座具の儀式、そして大射軍礼など、多岐にわたる儀礼を定めました。崔亮は洪武3年（1370年）9月、在職中に亡くなりました。

人物・逸話

崔亮は、洪武2年（1369年）に洪武帝（朱元璋）の父である朱五四の陵墓を英陵と名付け、祭礼を行うよう進言しました。これに対し、太常博士の孫吾与は、漢や唐の時代には初代皇帝の父親を祭った例がないと反論しました。しかし、崔亮は「後漢の光武帝は皇祖皇考の陵墓を昌陵と呼び、宋の太祖は高祖父の陵墓を欽陵、曾祖父の陵墓を康陵、祖父の陵墓を定陵、皇考の陵墓を安陵と呼んでおり、創業の君主は父祖を尊び、その陵墓を敬っている。故に祭礼を行うべきである。礼は人の情から起こるものだ」と主張し、朝廷の議論は崔亮の意見を支持しました。

また、崔亮は祭祀に関する様々な提案を行いました。

「礼記」礼運には「礼は郊で行い、そこで百神が職を受ける」とあるため、天下の神祗壇を圜丘の東、方沢の西に増やすべきだと主張しました。
「礼記」郊特牲には「器は陶匏を用いる」とあり、「周礼疏」には「外祀は瓦を用いる」とあるが、祭祀に磁器を用いるのは古の考えに合っているとしながらも、盥や鉢のような器は古代と異なるとし、磁器の器を全て高坏に換え、竹を用いるべきだと進言しました。
洪武帝が郊社の祭祀で雨に濡れることを心配した際には、宋の真宗が南郊で雨に遭遇した故事や元の『経世大典』の記録を引き合いに出し、祭壇の南に殿を建て、雨に遭った場合にそこで祭祀を観望することを提案し、これが採用されました。
洪武帝が天を祭る際に自身が中央に位置して礼拝するが、百官が東西に分かれている理由を尋ねた際には、「天子が行う天の祭りは、午陛から昇り、北を向いて答陽の義を表し、社を祭る際には子陛から昇り、南を向いて答陰の義を表す。群臣は君主の尊を避けるために、卯陛から昇降し、東西の列に分かれて馳道を避ける」と回答しました。

崔亮は、礼制に関する深い知識と、それを実践に結びつける柔軟な思考を持っていた人物であったと言えるでしょう。彼の功績は、明朝の礼制確立に不可欠なものでした。

参考文献

* 『明史』巻136 列伝第24

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