嵐野英彦

嵐野英彦（あらしの ひでを、1935年6月6日 - 2016年10月14日）は、昭和から平成にかけて日本の音楽シーンにおいて多大な功績を残した作曲家である。特に、テレビCMソング、そしてアニメや映画の音楽分野で広く知られ、そのメロディーは多くの人々の耳に残っている。

経歴の始まり

京都に生まれた嵐野は、東京芸術大学作曲科に進学し、松本民之助に師事して作曲技法を学んだ。在学中に朝日放送が主催した「クレハホームソングコンテスト」に応募したことが、彼のその後のキャリアにおける重要な転機となる。このコンテストを通じて、当時の日本を代表する音楽プロデューサーであった三木鶏郎の目に留まり、その才能を見出された嵐野は、三木が主宰する三木鶏郎音楽工房に招かれることとなった。

CM音楽の革新者

三木鶏郎音楽工房での活動は、嵐野にとって作曲家としての基盤を確立する時期となった。彼はここで、CM音楽という新しい分野において、サウンドロゴやインフォマティブ・ソングといった独自の表現スタイルを生み出し、日本のコマーシャルソングの歴史に新たな地平を切り開いた。簡潔でありながらも強い印象を残す彼のCM楽曲は、瞬く間に注目を集めた。特に、リコーダー一本による演奏が印象的な森永製菓のCMソング、「ピポピポ」は彼の代表作の一つとして広く知られており、日本のCM音楽の発展に彼が果たした役割の大きさを物語っている。嵐野英彦は、この分野における第一人者として、その名を確立したのである。

多様な創作活動

CM音楽での成功に加え、嵐野はアニメーションや映画音楽の世界でも精力的に活動した。特に、国民的な人気を博したロボットアニメ『鉄人28号』をはじめ、『遊星仮面』、『遊星少年パピイ』といった作品群の音楽を手がけ、ストーリーを彩る印象的な楽曲を提供した。また、俳優・石原裕次郎が主演した一連の映画作品の音楽も担当し、その活躍の場は多岐にわたった。

純音楽と教育への貢献

商業音楽の世界での活躍と並行して、嵐野は純音楽の創作にも取り組み続けた。彼の作風は決して前衛的ではなかったものの、例えば出版されたピアノ曲集IからIIIに収められた作品などに見られるように、簡潔かつ精緻な書法が特徴であった。特に、オペラ・ブッファ『たらちね』I・IIは、彼の純音楽における主要な作品として特筆される。

また、嵐野は音楽教育者としても後進の育成に力を注いだ。尚美学園や滋賀大学で教授として教鞭を執り、多くの学生たちに音楽の知識と技術を伝えた。彼の門下からは、赤石敏夫や河合孝治など、後に作曲家として活躍する人材を輩出している。

受賞と晩年

長年にわたる音楽活動と教育への貢献は高く評価され、嵐野はACC賞や日本音楽コンクール入選、さらには文部科学省社会教育功労賞など、数々の栄誉に輝いた。

2016年10月14日、嵐野英彦は81歳でその生涯を閉じた。彼の残した数々のメロディーは、今なお日本の音楽文化の中に生き続けており、特にCM音楽における先駆者としての功績は、日本の大衆文化史において重要な位置を占めている。

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