嵯峨浩

嵯峨 浩（さが ひろ） - 「流転の王妃」として知られる侯爵令嬢

嵯峨浩（1914年3月16日 - 1987年6月20日）は、日本の華族である侯爵嵯峨家の出身で、満洲国皇帝愛新覚羅溥儀の弟、溥傑の妻です。彼女の人生は、政治的背景と歴史的な影響を受け、波乱に満ちたものでした。その生涯は「流転の王妃」として広く知られており、彼女は自伝を通じてその経験を世に伝えました。

生い立ちと婚約

嵯峨家は藤原北家閑院流の一族であり、そのルーツを持つことから、一定の社会的地位と影響力を有していました。浩は1936年に女子学習院を卒業し、翌年には溥傑との婚約が発表されます。彼女の婚約は、当時の政治状況を反映したものであり、流れに身を任せる形での結婚でした。結婚式は1937年に東京で行われましたが、この時点では、満洲国の皇族である彼との結婚がどのような運命をもたらすか、まだ知る由もありませんでした。

在満洲国とその後

婚後、浩と溥傑は満洲国の首都、新京に移ります。二人の間には長女・慧生、次女・嫮生が誕生し、当初は平穏な家庭生活を送っていましたが、次第に歴史の波に飲み込まれていきます。

1945年、日本の敗戦が近づく中、浩は長女を日本に残し、新京に戻ることに。戦争の影響で夫婦の関係も不安定になり、最終的には溥傑が日本に亡命し、浩は陸路で帰国を目指すという困難な状況が続きました。

引き揚げと復帰

1947年には日本に帰国したものの、浩はその後も夫と離れた状態が続いていました。彼女は書道教師として生活を立て、二人の娘たちと避難先の日吉で円満な家庭を築きます。

当時の中国では、溥傑は人生の厳しい試練に直面しており、浩は彼を思い、手紙を書くことを決心します。その結果、彼らの文通が始まり、国務院総理の周恩来が仲介役となるなど、一筋の希望が生まれました。

北京での再会と文革

1960年、長い間の別離を経て、浩は溥傑と再会しますが、再会後直ちに文化大革命の波が彼らを襲いました。彼らの生活環境は一変し、自宅が襲撃されるなどしたものの、浩は情報を持ち続け、時折日本に里帰りすることができました。

最晩年と遺産

晩年、浩は北京で静かな生活を送りましたが、1987年にこの世を去ります。彼女の遺骨は故郷の中山神社に納骨され、溥傑が亡くなった後は、その半分が愛新覚羅社に納められ、残りは中国の空へ散骨されました。

著書と文化的影響

彼女の著書『流転の王妃』は多くの読者に感銘を与え、映画や演劇の題材としても取り上げられました。その影響力は現在も続いており、浩の人生は多くの人々にインスピレーションを与えています。

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