嵯峨鳥居本

嵯峨鳥居本：歴史と伝統が織りなす美しい町並み

京都市右京区に位置する嵯峨鳥居本は、古くから歴史と文化が息づく魅力的な地区です。その歴史は古く、かつては「化野（あだしの）」と呼ばれ、京の人々の埋葬地として知られていました。現在見られる町並みは、愛宕神社の鳥居前町として発展したものであり、独特の景観が特徴です。

二つの顔を持つ町：上地区と下地区

嵯峨鳥居本は、大きく分けて二つの地区から構成されています。化野念仏寺を境に、下地区には瓦屋根の町家風の民家が密集し、伝統的な町並みが広がっています。一方、上地区には茅葺き屋根の農家が多く、のどかな田園風景が広がり、下地区とは異なる趣を感じさせます。この二つの異なる風景が調和して存在するところが、嵯峨鳥居本の大きな魅力となっています。

歴史の重み：平安時代から続く歴史

嵯峨鳥居本の歴史は古く、大宝年間（701～704年）には、役小角と泰澄によって朝日峰に神廟が創祀されたと伝えられています。天応元年（781年）には、慶俊僧都と和気清麻呂によって愛宕山に愛宕大権現を祀る白雲寺（現在の愛宕神社）が建立されました。

平安時代には、弘仁2年（811年）に弘法大師（空海）が五智山如来寺を開き、嵯峨天皇の管理の下で、現在の一之鳥居が建立され、山麓周辺の開拓が進みました。室町時代には農林業や漁業を主体とした集落が開かれ、江戸時代中期には愛宕詣の門前町として栄えました。明治時代には、愛宕街道沿いに町家や茶店などが建ち並び、観光地として発展しました。

国の重要文化財：伝統的建造物群保存地区

1979年には、その歴史的価値と美しい景観が認められ、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。選定基準は、「伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示している」ことであり、嵯峨鳥居本の歴史と文化が凝縮された町並みが評価された証です。

見どころ：歴史と文化に触れる

嵯峨鳥居本には、多くの見どころがあります。化野念仏寺は、空海が野ざらしとなっていた遺骸を埋葬したことに始まる寺で、現在は浄土宗の寺院です。愛宕念仏寺は、千二百羅漢像で知られています。愛宕神社の一之鳥居は、神社まで50町（約5.5km）の場所に建てられており、その壮大さに圧倒されます。

また、平野屋という江戸時代創業の茅葺きの茶屋では、鮎料理が名物として人気があります。その他、京都市嵯峨鳥居本町並み保存館、さがの人形の家などの施設も存在し、歴史と文化に触れることができます。

周辺地区との繋がり

嵯峨鳥居本は、清滝や嵯峨二尊院門前など、周辺地区とも歴史的に深く関わっています。清滝は愛宕神社参詣道の途中にあたる旧宿場町で、避暑地としても栄えました。嵯峨二尊院門前は、二尊院の門前町として発展しました。これらの地区と合わせて、嵯峨野全体の観光を満喫することができます。

嵯峨鳥居本は、歴史と自然、そして伝統的な町並みが調和した、訪れる人を魅了する場所です。静寂の中に歴史を感じ、美しい景観を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごしたい方におすすめです。

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