巌崎健造

巌崎健造

巌崎健造（いわさき けんぞう、天保12年9月1日（1841年10月15日） - 大正2年（1913年）10月2日）は、武蔵国出身の囲碁棋士。9世安井算知門下で八段。方円社3代目社長として、碁界の本因坊秀栄と並び、明治後半の囲碁界を盛り上げました。

生涯

多摩郡田無村（現在の東京都西東京市）の旅籠の次男として生まれ、幼名は鍋吉。幼少の頃から囲碁に親しみ、零落した家計を助けるため、新倉村東福寺に預けられます。そこで和尚の碁の相手をするうちに才能を見出され、太田雄蔵に師事。12歳の頃には、賭け碁で薬代を稼いだという逸話も残っています。

13歳の時、和尚が亡くなったため江戸に出て八百屋で働きますが、その後郷里に戻り、安井家に入門。健造と名乗り、囲碁の道へ。

安政4年（1857年）に初段、安政6年（1859年）には本因坊秀策と二子で十番碁を打ち、四段に進みます。文久2年（1862年）には五段に昇段し、安井家四天王の一人と称されました。

明治維新後は、大久保利通に従い官吏となります。東京府消防指図役、神奈川県始審裁判所書記などを歴任。明治15年（1882年）に司法庁所属となり、東京で方円社の手合に参加。この間に、絶家となっていた巌崎家を継ぎました。

明治20年（1887年）に六段。明治25年（1892年）には、方円社副社長に就任。明治27年（1894年）七段。明治32年（1899年）に三代目社長に就任し、明治39年（1906年）に八段に昇段。大正元年（1912年）に引退し、翌年73歳で亡くなりました。門下には、木村広造、鈴木為次郎がいます。

棋歴

明治16年（1883年）、水谷縫次との対局で、水谷の妙手により敗北。
明治29年（1896年）、田村保寿（後の本因坊秀哉）との対局で勝利。
明治32年（1899年）、泉秀節と電信碁を行い、人気を博しました。

方円社運営

方円社は本因坊家と並ぶ囲碁界の重要な組織でしたが、明治20年代には本因坊秀栄の台頭により、勢いが衰え始めます。巌崎は社長として、財政の改善に尽力。社屋を自宅に移転し、初心者向けの囲碁雑誌を刊行するなど、経営の安定化を図りました。

しかし、秀栄が名人に就位した際には異議を唱え、争碁を申し込むも実現には至りませんでした。東京朝日新聞で三十六段連碁、万朝報で坊門との対抗戦を企画するなど、興行面でも手腕を発揮。鈴木為次郎や瀬越憲作を育成し、後進の指導にも力を注ぎました。

著書

『囲棋大鑑』(1893年、中川亀三郎、小林鉄次郎と共著)
* 『囲碁段級人名録』(1900年)

巌崎健造は、激動の時代に囲碁界を支え、発展に貢献した人物として、その名が刻まれています。

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