川上四郎

川上四郎：童画の父、その生涯と業績

川上四郎（1889年11月16日 - 1983年12月30日）は、大正から昭和にかけて日本の童画界を牽引した画家です。彼の作品は、日本の原風景とも言える牧歌的な農村風景を、温かみのある素朴な画風で描き出し、多くの人々に親しまれました。彼は単に絵を描くだけでなく、「童画」という言葉を生み出し、児童向けの絵画の芸術的な地位を高めることに尽力しました。その功績から、「童画の父」「日本童画の父」とも呼ばれています。

生い立ちと初期の活動

川上四郎は、1889年に新潟県長岡市の豪農の家に四男として生まれました。幼い頃から絵画に興味を持ち、長岡中学校在学中には図画教員の望月俊稜に師事し、画家を志すようになります。1908年には東京美術学校（現・東京藝術大学）西洋画科に入学し、藤島武二や黒田清輝といった当時の巨匠たちに師事しました。美校卒業後は研究科に進み、その後、榛原中学校で美術教師を務めます。

童画の世界へ

1916年、川上はコドモ社に入社し、雑誌『コドモ』や『良友』などに挿絵を描き始めました。ここで、彼は児童向けの絵画に新たな可能性を見出し、「童画」という言葉を提唱し、その振興に力を注ぎます。1920年には、コドモ社が創刊した雑誌『童話』の主任画家となり、表紙画や挿絵を数多く手掛けました。彼の描く子供たちの姿や、日本の美しい風景は、多くの読者の心を捉え、童画というジャンルを確立する上で大きな役割を果たしました。

童画家としての確立と晩年

川上は、『童話』の他にも、『赤い鳥』、『金の船』、『コドモノクニ』など、数多くの雑誌や児童書に作品を提供しました。彼の作品は、子供たちの夢や希望を描き出し、世代を超えて愛され続けています。

1927年には、初山滋、武井武雄らとともに「日本童[[画家協会]]」を結成し、童画の地位向上に尽力しました。戦後も精力的に創作活動を続け、童画界の長老として晩年まで絵筆を振るいました。1983年、心不全のため94歳で逝去。

没後の顕彰

川上の故郷である湯沢町では、彼の功績を称え、没後10年にあたる1993年に「日本童画の父 川上四郎展」が開催されました。また、1997年からは毎年「川上四郎記念 越後湯沢全国童画展」が開催され、多くの人々が彼の作品に触れる機会が設けられています。長岡市でも市立図書館に「川上四郎文庫」が作られるなど、その功績は広く顕彰されています。

主な作品

川上四郎は生涯にわたり、数多くの作品を残しました。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

雑誌『童話』表紙画・挿絵
雑誌『赤い鳥』挿絵
『椋鳥の夢』（浜田広介 著）挿絵
『良寛さま』（小学館の幼年絵本）
『さるとかに』（小学館の育児絵本）

これらの作品は、現在でも多くの美術館や図書館で所蔵されており、その美しい色彩と温かい作風は、見る人の心を癒し、感動を与え続けています。

参考文献

久保尋二 監修・執筆『越佐の画人』新潟日報事業社出版部 1987
* 長岡市 編『ふるさと長岡の人びと』長岡市 1998

川上四郎は、日本の童画史において、かけがえのない存在です。彼の作品は、子供たちの心を育み、夢と希望を与え続けています。彼の功績は、これからも語り継がれ、多くの人々に愛され続けることでしょう。

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