川上紀一

川上紀一：激動の時代を駆け抜けた政治家の生涯

川上紀一（かわかみ きいち）は、1919年（大正8年）に生まれ、2009年（平成21年）に逝去した日本の政治家、内務官僚です。千葉県知事を二期務め、その政治手腕と激動の生涯は、今もなお語り継がれています。

生い立ちと官僚時代

川上紀一は、千葉県安房郡富浦町（現在の南房総市）で、羽山姓の家に生まれました。後に市川市の川上家へ婿入りし、川上姓を名乗るようになります。東京帝国大学法学部政治学科を卒業後、内務省に入省。その後、千葉県警察部を経て、1948年から千葉県庁に勤務しました。31歳という若さで地方課長に抜擢され、1962年には千葉県総務部長に就任するなど、その能力は高く評価されていました。

1964年には、当時の千葉県知事であった友納武人の下で副知事に任命され、県政の中枢を担うこととなります。

成田空港問題への対応

1965年、新東京国際空港（現在の成田国際空港）の富里建設が突如発表された際、病気療養中の友納知事に代わり、川上がその対応に追われることになります。当時の状況を川上は「現地は驚天、大混乱、激高その極に達した」と語っており、混乱を極めた状況が伺えます。1971年には、成田空港予定地の代執行において現地総指揮官として派遣され、成田空港問題の最前線に立つこととなりました。

千葉県知事として

1974年、川上は自由民主党の協力を得て、当時の現職知事であった友納を次の知事選に立候補させず、自身が知事選に出馬する道を選びます。翌1975年、千葉県知事選挙に無所属（自民党推薦）で出馬し、見事初当選を果たしました。1979年には再選を果たし、その際に獲得した1,373,650票は、2021年に熊谷俊人が更新するまで、千葉県知事選挙における史上最多得票数でした。

知事在任中には、1978年の成田開港に向けて、当時の運輸大臣であった田村元と協議を重ね、インフラ整備など多くの要求を国に認めさせました。また、東京ディズニーランド建設をめぐっては、オリエンタルランドと親会社の三井不動産との対立に介入し、オリエンタルランドの高橋政知社長を支援することで三井不動産側を譲歩させ、浦安町（当時）への誘致を実現しました。

失脚とその後

1981年1月、知事選出馬前に支援を要請した都内の不動産業者から5,000万円の献金を受け、「当選の暁には弊社の千葉県における事業発展に協力を惜しまない」旨が記された念書を交わしたことが発覚しました。この事件（川上五千万円念書事件）により、川上は同年2月16日に千葉県知事を辞任することとなりました。この事件の背景には、1980年の成田空港への航空燃料輸送問題で川上が強硬な姿勢をとったため、県政の実力者である菅野儀作の面目が潰されたことが原因の一つであるとも言われています。

知事辞任後の1983年、川上は衆議院議員選挙に故郷のある旧千葉県第3区から出馬を表明しました。しかし、自民党の公認を得られず無所属での出馬となり、最下位当選の中村正三郎に5,000票差まで迫るも、落選という結果に終わりました。その後、73歳になるまで大東文化大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

2009年8月14日、川上紀一は肺炎のため、その波乱に満ちた生涯を終えました。

参考文献

『現代政治家人名事典』日外アソシエーツ、1999年。

関連項目

川上五千万円念書事件

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