川原繁人

川原繁人

川原繁人（1980年生まれ）は、日本の言語学者、認知科学者であり、特にインターフェイス論、音象徴、実験言語学を専門としています。現在は慶應義塾大学言語文化研究所の教授を務めています。

学歴と職歴

東京都世田谷区出身の川原氏は、国際基督教大学で吉田智行氏の指導を受け、学士号を取得しました。その後、マサチューセッツ大学の言語学科大学院に進学し、ジョン・キングストン氏の指導のもとで博士号を取得しました。博士論文では、音韻パターンに対する音声的要因の影響をテーマに研究を行い、その成果は学術雑誌にも掲載されています。

博士号取得後は、ジョージア大学助教授、ラトガーズ大学助教授を経て、慶應義塾大学に移籍しました。ラトガーズ大学では音声実験室の所長も務めました。また、複数の国際雑誌の編集委員や編集責任者も務めています。

研究内容

川原氏の研究は、音韻論と音声学の境界領域に焦点を当てています。学生時代から音韻論を専門としていましたが、現在は音韻規則の基盤となる音声のメカニズムにも関心を広げています。知覚実験に基づいて音韻パターンの起源を探る一方で、音韻パターンが知覚に与える影響も研究しています。さらに、音韻パターンの分析に実験を取り入れるなど、新たな手法も積極的に導入しています。

川原氏の研究対象は多岐にわたり、日本語のラップの歌詞や洒落の言語学的研究、ポケモンの名前の音象徴、プリキュアの名前、ドラクエの呪文、秋葉原のメイドの源氏名、宝塚の役名、AKBメンバーのニックネーム、メイド声など、一見すると言語学とは関係のないような現象にも光を当てています。これらの研究を通じて、言語の普遍的な性質や人間の認知メカニズムに迫ろうとしています。

また、日本語のアクセントやイントネーション、インターネットを使った実験、統計的な手法を用いたコーパス分析、EMAやEPGを用いた調音実験など、幅広い研究手法を駆使しています。研究対象とする言語も日本語だけでなく、英語、ノルウェー語、フランス語、アラビア語、中国語など多岐にわたります。

身近な題材を言語学の分析に取り入れることで、言語学の裾野を広げることも川原氏の研究目標の一つです。また、ALS患者の声を救うマイボイスプロジェクトにも積極的に参加するなど、社会貢献にも力を入れています。ラッパー、声優、歌手、歌人など、大学外部の人々とのコラボレーションも積極的に行っています。

著作

川原氏は、多数の著作を執筆しており、その内容は専門的なものから一般読者向けのものまで幅広く、言語学の面白さを伝えています。

主な著書

『音とことばのふしぎな世界 メイド声から英語の達人まで』 (岩波書店, 2015)
『「あ」は「い」より大きい！？ 音象徴で学ぶ音声学入門』 (ひつじ書房, 2017)
『ビジュアル音声学』 (三省堂, 2018)
『言語学者、外の世界へ羽ばたく ラッパー・声優・歌手とのコラボからプリキュア・ポケモン名の分析まで』(教養検定会議, 2022)
『フリースタイル言語学』 (大和書房, 2022)
『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで』(朝日出版社, 2022)
* 『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか？ 言語学者、小学生の質問に本気で答える』 (ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2023)

これらの著作を通じて、川原氏は言語学の魅力を広く伝え、多くの人々に言語への関心を抱かせています。

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