川古のクス

川古のクス：悠久の時を刻む巨樹

佐賀県武雄市若木町川古に位置する「川古のクス」は、樹齢3000年以上とも推定されるクスノキの巨木です。その圧倒的な存在感から、1924年に国の天然記念物に指定されました。

巨樹ランキングでも上位にランクイン

環境省の「巨樹ランキング」では、国内第5位にランクインするほどの巨樹であり、その太さは国内有数です。地上に隆起した根が複雑に入り組み、幹との境目が判然としない独特な形状をしています。幹周りは21メートル、樹高は25メートルに達し、枝張りは東西南北それぞれ27メートルにもなります。

地域の人々に愛される「大楠」

佐賀県ではクスノキが「県の木・県の花」に選ばれており、県民にとって馴染み深い木です。県内には多くのクスノキの巨樹や老木がありますが、その中でも川古のクスは最大級。地元では「川古の大楠」や「川古大楠」と呼ばれ、地域住民の信仰の対象として大切に守られてきました。

川古の大楠公園

川古のクスは、「川古の大楠公園」内にあります。この公園は、1995年にクスノキ周辺の整備事業として造営されましたが、それ以前は日子神社の境内でした。そのため、過去の文献には「日子神社の境内に生育する」と記載されていることがあります。

クスノキの特徴

川古のクスの特徴の一つは、根部が地上に隆起していることです。そのため、根と幹の境目がわかりにくくなっています。環境省の調査では、地上1.3メートルの高さでの幹囲は21メートルでした。また、地上2メートルでは12.5メートル、4メートルでは11.4メートルとなっています。根回りは33メートルから35メートルとされています。

幹の内部は空洞化しており、そこには稲荷の石碑が祀られています。根元の南側にあった空洞の開口部は樹脂で補修されています。また、このクスノキには多くの植物が着生しており、枝にはボウラン、ノキシノブ、マメヅタなどが、幹の腐朽部分にはネズミモチ、シュロ、ハゼノキなどが生えています。

観音像伝説

伝承によると、奈良時代の僧侶である行基がこの地を訪れた際、クスの幹に観音像を彫ったとされています。しかし、明治時代の廃仏毀釈によって削り取られてしまいました。その際、観音像の頭部から六臂観音像が現れ、主幹の空洞入口に祀られました。

削り取られた観音像は、1987年の台風で剥離してしまいましたが、その際に発見された六臂観音像は「川古のクス幹彫り観音立像」として、武雄市の重要文化財に指定され、隣接する仏堂に安置されています。

保護活動

1995年の公園整備時には、樹木医によるクスノキ本体の治療が行われ、空洞化の進行抑制や土壌改良、避雷針の設置などが実施されました。

佐賀県とクスノキ

佐賀県には、この川古のクス以外にも多くのクスノキの巨樹があります。佐賀の地名由来には、クスノキが「栄えて」いるのを見た日本武尊が「栄国」と呼ぶように言ったという説もあり、佐賀県とクスノキは深い縁で結ばれています。

アクセス

所在地：佐賀県武雄市若木町大字川古7843

交通：
JR佐世保線武雄温泉駅からコミュニティバスで川古バス停下車、徒歩2分
長崎自動車道武雄北方インターチェンジから車で約10分


川古のクスは、悠久の時を超えて生き続ける巨樹であり、その姿は訪れる人々に深い感動を与えます。

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