川名登

川名登（かわな のぼる）は、1934年6月13日に生まれ、2011年6月11日に逝去した日本の経済史学者、河川水運史研究者です。千葉経済大学の名誉教授を務めました。彼の研究は、特に近世日本の河川水運史に焦点を当て、その社会経済的な側面を深く掘り下げたものでした。

千葉県銚子市で生まれた川名氏は、千葉県立千葉第一高等学校を経て、千葉大学文理学部史学科日本史学専攻に進学しました。1957年に同大学を卒業後、明治大学大学院文学研究科日本史学専攻修士課程を修了。その後、博士課程を単位取得満期退学しています。学究生活を終えた後は、横須賀市博物館に勤務した後、千葉経済大学短期大学の教授に就任しました。1987年に千葉経済大学経済学部が設置されると、同大学の教授となり、2005年に定年退任、名誉教授の称号を受けました。

川名氏の研究は、単なる歴史的事実の記述に留まらず、その背景にある社会構造や人々の生活に着目した点が特徴です。1993年には、『日本近世河川水運史の研究』で文学博士号（明治大学）を取得しました。また、1991年には利根川文化研究会を創設し、会長として機関誌『利根川文化研究』を刊行するなど、利根川流域の文化研究にも大きな足跡を残しています。

彼の著書には、『南総の豪雄 里見義尭』、『河岸に生きる人びと 利根川水運の社会史』、『房総里見一族』、『近世日本水運史の研究』、『河川水運の文化史 江戸文化と利根川文化圏』などがあります。これらの著作は、河川水運が地域社会や文化に与えた影響を多角的に分析しており、歴史学研究に重要な貢献をしました。特に、『近世日本の川船研究 近世河川水運史』は、近世における川船の構造や役割について詳細に論じた研究書として高く評価されています。

さらに、川名氏は『河岸』や『戦国近世変革期の研究 房総の武家文書と検地帳から』といった著作を通じて、河川と地域社会の関わり、また戦国時代から近世にかけての社会構造の変化について考察しています。『評伝赤松宗旦 「利根川図志」が出来るまで』では、利根川の歴史を描いた「利根川図志」の成立過程を詳細に解説しています。編著としては、『里見家分限帳集成 附安房国寺社領帳』、『郷土千葉の歴史』、『すべてわかる戦国大名里見氏の歴史』、『房総と江戸湾』、『千葉県の歴史一〇〇話』などがあります。これらの編著は、地域史研究の発展に大きく貢献しました。

2011年、川名氏は肺癌のため77歳で逝去されましたが、その研究業績は現在もなお多くの研究者に影響を与え続けています。彼の研究は、歴史学だけでなく、地域文化や社会構造を理解する上で欠かせないものとなっています。

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