川喜多かしこ

川喜多かしことその功績

川喜多かしこ（かわきた かしこ、1908年3月21日 - 1993年7月27日）は、昭和期における映画文化活動家として知られている。彼女は川喜多記念映画文化財団の理事長を務め、東和映画の代表をも担っていた。

生い立ちと経歴

明治41年に大阪で生まれた川喜多は、生後100日目に東京へ移り住んだ。その後、横浜、大連、そして秋田と次々に移り住むことになる。1921年には、横浜にいる祖父の家に帰り、フェリス和英女学校に入学する。この頃、関東大震災により父を失い、神戸へ移るも、すぐに学校に復帰した。長い年月を経て、1929年には英語を使える女性秘書として東和商事に遣われ、当時の貿易業に携わった。

特に有名な仕事の一つが、当時の映画監督溝口健二の作品『狂恋の女師匠』の英訳であり、このような活動を通じて彼女の映画に対する情熱が芽生えていった。そして、この年の秋、彼女は川喜多長政と結婚し、以後「川喜多かしこ」として知られることになる。

1932年、夫と共にヨーロッパを訪れた際に仕入れた映画『制服の処女』は日本で大ヒットし、1933年度キネマ旬報ベスト・テンの第1位を獲得。この成功を皮切りに、彼女は『自由を我らに』、『望郷』、『どん底』、『民族の祭典』などの名作を日本へ輸入していった。

映画への貢献

1953年、15年ぶりに再度ヨーロッパを訪れた際、キネマ旬報ベスト・テン第1位の『禁じられた遊び』を輸入し、さらなる脚光を浴びた。また、1960年にはフィルム・ライブラリー助成協議会を設立し、映画の収集・保存活動に尽力した。特に日本の国立フィルム・アーカイブの設立を目指す活動は彼女の取り組みの中でも特に意義深いものであった。

1963年には、パリでの日本映画大回顧展にて上映した131本の映画を東京国立近代美術館に寄贈し、日本初のフィルム・アーカイブの一部になった。

人物像

「マダム・カワキタ」と呼ばれることもあった彼女は、キャリア・ウーマンとしての活躍で知られながら、意外にもシャイで、人前に出ることを好まなかった。また、試写室で無名の新人監督の作品を観るなど、映画界の育成にも尽力していた。彼女の視野は広く、年間300本もの映画を視聴し、夫と共に配給した映画は1500本を超える。

英語・フランス語・ドイツ語を自在に操り、常に紫色の着物をまとっていた。映画祭での審査員活動では、その影響力を発揮し、国際的に認識される存在だった。

家族と記念館

川喜多長政を夫に持ち、長女は川喜多和子。長政夫妻の遺族は、彼らの旧邸宅を寄贈し、2010年には川喜多映画記念館が開館した。館内では、夫妻に関連する多くの品々や映像資料が展示されている。

最近では「生誕百年 川喜多かしこ展」が東京国立近代美術館フィルムセンターで開催され、彼女の功績を広く伝える機会となった。

受賞と評価

彼女の業績は数々の賞で評価されており、芸術選奨文部大臣賞やフランス芸術文化勲章、紫綬褒章、イタリア共和国功労勲章など、多くの名誉を受けた。

1993年に85歳で逝去した彼女は、その一生を通じて日本映画界に多大な影響を与えた人物であり、今もなお多くの人に敬意を持たれている。

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