川島武宜

川島武宜の生涯と業績

川島武宜（かわしま たけよし）は、1909年10月17日に岐阜県岐阜市に生まれ、1992年5月21日に逝去した日本の著名な法学者です。彼の専門は民法と法社会学であり、東京大学名誉教授として多くの学問的業績を残しました。1969年に「所有権法の理論」で法学博士の学位を取得し、その後、弁護士としても活動を展開しました。川島は1979年に学士院会員、1991年には文化功労者に選ばれるなど、その功績が広く認められています。

人物と背景

彼は東京帝国大学教授やスタンフォード大学の客員教授などを歴任し、多様な教職を経て、戦後民主主義や啓蒙主義について議論した数少ない論者の一人でした。彼の著作は、丸山眞男や大塚久雄とともに日本の思想界でも重要視されています。また、家族に関しても特筆すべき点があり、娘婿は外務事務次官や宮内庁式部官長を歴任している川島裕であることからも、その家族の背景が浮かび上がります。

学問の探求と批判

学生時代にルドルフ・フォン・イェーリングの『法における目的』に触れたことから法社会学に興味を抱きましたが、最初は民法の研究者としての道を選ぼうとしていました。しかし、特定の法律問題についての報告で、当時の権威ある教授から概念法学と批判され、法解釈に対する根本的疑問を持つようになりました。この経験が、後に著作『科学としての法律学』を書くきっかけとなります。

また、彼は传统的な日本の家族制度や法意識を批判し、前近代的な擬制的家族関係とその問題を追求しました。

日本人の法意識

川島の代表作『日本人の法意識』では、日本における法の概念について独自の視点を示しています。彼によれば、日本の伝統的な法意識では権利や義務があってもそれが明確に理解されることは好まれないとしています。また、訴訟を起こすことに対する偏見を指摘し、これが日本人の心に根強く残っていると述べています。このような視点は、日本人特有の法意識を理解する上で重要な貢献となっています。

著作活動

川島は多数の著作を持ちますが、時折、同じ題名のもので異なる内容やほぼ同じ内容で異なる題名が存在することもあります。これは、雑誌や新聞への連載を通じて編集、加筆修正を繰り返したためです。しかし、これを整理し、自身の研究の集大成として『川島武宜著作集』を岩波書店から出版しました。

戦争と大学紛争

昭和初期からの検閲による影響で彼の研究や著作活動には困難が伴いました。戦後、彼が執筆した内容は、リアルタイムのものではないと序文で明言しています。また、大学紛争の際には、研究室が荒らされ、貴重な資料が失われました。これにより、川島の研究活動は大打撃を受け、彼は辞職を考えざるを得ない状況に追い込まれましたが、家族の支えを受けながら定年退官まで勤め上げました。

最後に

退官後は私立大学からの招聘も受けましたが、学者としての活動には限界を感じ、弁護士としての道を歩むことを選択しました。川島武宜の業績は、今に至るまで日本の法学界に多大な影響を与え続けており、彼の研究や著作は法社会学の発展に重要な役割を果たしています。

もう一度検索