川崎九淵

川崎九淵 - 能楽の大鼓名手

川崎九淵（かわさき きゅうえん）、本名利吉は、1874年7月11日に愛媛県温泉郡魚町で生まれました。彼は能楽の大鼓方として非常に高い評価を受け、能楽界初の人間国宝として特に知られています。また、彼は理論面でも優れた貢献を残し、地拍子の法則性を発見したことで、能楽の実践と研究に寄与しました。

初期の生涯と学びの時期

九淵は幼少期から地元の喜多流を習い、松山東雲神社での奉納能で神童と称された経歴があります。その後、彼は高橋節之助に評価され、葛野流大鼓を東正親に師事することになりました。1892年には、石井流宗家の石井一斎が彼を後継者に求めるほどの才能を発揮しました。1899年、川崎は東京に上京し、津村又喜に学びますが、彼の師は急死。その後、宝生流宗家の宝生九郎知栄や幸流三須錦吾、観世流の観世元規などから指導を受けつつ、自らの技を磨きました。

活動の軌跡と重要な舞台

九淵は、1904年の日露戦争献金能で「石橋」連獅子を舞うなど数多くの重要な舞台で活躍しました。1910年の明治天皇の天覧能や1915年の大正天皇即位式能といった大舞台での演技が特に目立ちます。さらに、能楽界の後進育成にも深く関わり、吉見嘉樹や亀井俊雄といった弟子を育て上げました。このように、彼は芸術と教育の両面で重要な役割を果たしました。

戦中から晩年にかけての活動

戦争中は秋田に疎開し、終戦後は武智鉄二の勧めにより京都に移り住みます。この時より「九淵」の名を名乗り始めました。1950年には東京に移り、葛野流の宗家預りの座に就き、さらに1953年には初めての芸術院会員に選ばれます。1955年には喜多六平太や幸流幸祥光とともに、能楽界初の重要無形文化財保持者に認定されました。

引退と遺産

1956年、嗣子之靖の死去を受けて引退を決意し、同年9月に引退披露能を行いました。82歳で能楽界を離れた彼は、日々の精進を重ねてきた誇り高い実演家でした。1961年1月24日、86歳で世を去りました。九淵は実演活動だけでなく、理論的な貢献も重視し、雑誌「能楽」での連載「地拍子研究」によって、現代式地拍子という技法を確立しました。

エピソードと性格

九淵は生涯清貧を守り続け、能楽界では素人弟子がほとんどいなかったため、後進の育成に専念しました。彼は同時代の名手から高く評価され、特に1955年には桜間弓川との「関寺小町」に向けて1ヶ月も稽古をした逸話が残っています。このような懸命な努力と技の追求は、彼が自身の芸術に対して謙虚であり続ける姿勢を物語っています。また、彼の厳格な性格は、時に同時代の他の能楽師との対立を引き起こすこともありました。

川崎九淵の業績と燃え続ける情熱は、今も多くの後進に影響を与え、能楽の発展に寄与し続けています。

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