川崎市体育館

川崎市体育館

かつて神奈川県川崎市川崎区に存在した川崎市体育館は、約58年間にわたり市民のスポーツ活動や様々なイベントの拠点として親しまれました。この施設は川崎市が所有し、2006年（平成18年）4月1日からは指定管理者制度に基づき、（公財）川崎市スポーツ協会が運営管理を担っていました。

1956年（昭和31年）4月1日に「川崎市民会館」として開館したこの体育館は、長年の利用を経て施設の老朽化が進んだため、周辺施設と合わせた再整備計画の一環として閉館が決定しました。そして、2014年（平成26年）12月27日をもってその歴史に幕を下ろし、建物は解体されました。

施設概要

川崎市体育館は、大ホール、トレーニング室、補助ホールなどを備えていました。中心となる大ホールは面積1,476平方メートル、観客席数1,496席を有し、バドミントン（8面）、卓球（30台）、バスケットボール（2面）、バレーボール（3面）、ハンドボール（1面）、屋内テニス（1面）、フットサル（1面）など、様々な屋内スポーツに対応できる多目的空間でした。

多様な利用と歴史的な瞬間

この体育館は、市民向けのスポーツ教室をはじめとする日常的な利用に加え、プロレスやボクシングといったスポーツ興行の会場としても頻繁に利用されました。

1995年（平成7年）にとどろきアリーナが完成して以降、大規模なイベントの開催は減少しましたが、記憶に残る歴史的な舞台であり続けました。1998年（平成10年）の「かながわ・ゆめ国体」ではバスケットボール会場として使用された実績があります。

また、ボクシング界においては、元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高選手が、1979年（昭和54年）1月7日にこの体育館で7度目の防衛戦を行い、ノックアウト勝利で当時の日本人世界王者最多防衛記録を達成した地としても知られています。

「プロレスの聖地」と呼ばれて

川崎市体育館の代名詞ともいえるのが、「女子プロレスの聖地」としての顔です。1970年代以降、全日本女子プロレスが後楽園ホールを上回る頻度で興行を開催し、クラッシュギャルズの伝説的な王座戦（1988年）など、数多くの歴史的な名勝負が繰り広げられました。1990年代以降も、JWP、LLPW、GAEA JAPAN、アルシオン、NEO女子プロレス、そしてワールド女子プロレス・ディアナといった様々な団体が利用し続けました。特に、1997年（平成9年）12月5日に行われたLLPWとJWPの初の公式交流戦は、プロレス史における重要な出来事として記憶されています。

男子プロレスでも、古くは力道山時代の日本プロレス、その後は全日本プロレスや新日本プロレスが使用し、全日本はオープン選手権決勝のようなビッグマッチを開催したこともあります。1990年代に入ると、大日本プロレスが主に利用するようになりました。

ただし、体育館の床を保護するため、蛍光灯などを使用する過激なデスマッチ形式は行うことができませんでした。大日本プロレスは代替ルールを模索しましたが、この制約が会場利用の限界となり、最終的には他の会場へ移行することになりました。

閉館、そして未来へ

築50年を超え老朽化が進んだ川崎市体育館は、周辺の教育文化会館、弓道場と一体となった複合施設への建て替え計画が2011年（平成23年）に発表されました。

川崎市は2014年（平成26年）4月1日、体育館を同年12月27日に閉館することを正式に告知。閉館までの期間には、長年の感謝を込めた様々なイベントが開催されました。

2014年12月13日には「さよならイベント」として市民向けの催しが行われ、そして12月23日には最後の格闘技興行としてディアナが「川崎伝説」を開催。メインイベントの井上京子対堀田祐美子によるノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチは、「女子プロレスの聖地」での壮絶な最後を飾る試合となりました。

最終日の12月27日には市民卓球大会が開催され、これが川崎市体育館で行われた最後のイベントとなりました。大会終了をもって、58年間に及ぶ施設の歴史に静かに幕が下ろされました。

閉館後、旧体育館は解体され、跡地にはPFI事業による新たな複合施設「川崎市スポーツ・文化総合センター」が建設されました。2014年度（平成26年度）に着工し、2017年（平成29年）10月1日にオープンした新施設は、川崎市の新たな文化・スポーツの拠点として活動を続けています。

アクセス

旧川崎市体育館は、JRまたは京急の川崎駅から徒歩約15分の場所に位置していました。

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