川廻し

川廻し：千葉県上総地方の特異な河川整備工法

川廻し（かわまわし）は、主に千葉県上総地方で見られる河川整備の手法であり、農地としての利用を目的に蛇行する河川の流路を短縮する工法です。この手法では、トンネルや切り通しを設けて天然の河道を変更し、その結果として旧河道を水田や他の土地利用に転用します。元々は江戸中期から明治中期にかけて行われ、夷隅川流域などでの耕作地の拡大を目的としていました。

概要

川廻しは、特に千葉県上総地方南部の丘陵地帯で実施されてきた工事で、蛇行する河川が持つ流下能力を活かすための対策として発展しました。夷隅川流域では、江戸時代から流下阻害の要因を取り除くため、また農地を増やす目的でこの工法が施されました。今日でも、農地への転用後の旧河道は河床の高さを様々な場面で維持することが評価されていますが、急速な流路直線化にはリスクも伴います。

その中でも特に注目すべきなのは、流路の急激な変化が掃流力の大幅な変動を引き起こす可能性がある点です。この現象は、蛇行河川が持つ自然な貯留能力を大きく損なう恐れがあります。結果として、河川の合流点や背水区間で氾濫の危険性が高まることも指摘されています。このようなリスクを抱えながらも、千葉県ではコンクリートトンネルや開水路による流路のショートカットが継続して行われています。他の地域でも、同様の整備方法が用いられており、新潟県渋海川では「瀬替え」として知られています。

具体例

夷隅川流域

夷隅川流域には、第三紀に形成されたシルト層や砂層、泥層から構成される上総層があります。この上総層の掘り抜きを行うことで直線化が実施され、多くの農地が創出されました。この地域の川廻しは非常に古く、地形的にも重要な影響を与えています。

市原市田淵地区

市原市田淵の養老川周辺では、江戸時代に整備された川廻し地形が現在でも見ることができます。ここでは河道の変更や盛り土により旧河道がつくり出され、特に建設されたトンネルは現存し、地域の現代においても観察可能です。近年でも2019年には、令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風の影響を受け、一時的にこの旧河道が水没しました。

結論

川廻しは千葉県上総地方特有の工事手法であり、農地の拡大や流下阻害の改善に寄与していますが、その弊害として河川の氾濫リスクも抱えています。今後の河川整備には、そのバランスをどう取るかが重要な課題となるでしょう。

もう一度検索