川戸駅

川戸駅：三江線の歴史を刻んだ駅

島根県江津市桜江町に位置していた川戸駅は、西日本旅客鉄道（JR西日本）三江線の駅として、長きにわたり地域住民の足として活躍しました。1930年4月20日、三江線の石見江津駅（現在の江津駅）から川戸駅間が開通した際に、終着駅として開業。当時は島根県邑智郡川戸村に属し、有人駅として賑わいを見せていました。その後、1931年には三江線が川戸駅から石見川越駅まで延伸され、途中駅となりました。

駅の所在地表示は、1954年の桜江村成立により島根県邑智郡桜江村川戸、1956年の町制施行により島根県邑智郡桜江町川戸と変化しました。また、1955年には三江線が三江北線に改称され、1975年には江津駅～三次駅間が全通したことで現在の三江線の一部となり、駅としての歴史を刻んでいきました。1987年の国鉄分割民営化により、JR西日本に承継されたのちも、地域住民にとって重要な交通手段であり続けました。

しかし、時代の流れとともに利用客は減少。1999年には列車交換設備が撤去され、江津駅～浜原駅間では石見川本駅のみが列車交換可能な駅となりました。2004年には桜江町が江津市に編入され、所在地表示は島根県江津市桜江町川戸となりました。そして、2018年4月1日、三江線の全線廃止に伴い、川戸駅は廃駅となりました。

川戸駅の駅構造は、浜原方面に向かって左側に単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。かつては2面2線の相対式ホームと行き違い設備を備え、5本の線路がありましたが、廃止時には駅舎側の線路以外が撤去され、使われなくなったホームなどが残されていました。開業当初は駅員が常駐していましたが、廃止前には浜田鉄道部が管理する無人駅となっていました。駅務室として使用されていた部屋には、かつてNPO法人「結まーるプラス」の事務所が入居していました。自動券売機などは設置されていませんでした。

利用状況は年々減少しており、1994年度には1日平均乗車人員171人、1984年度には265人だったと記録されています。周辺は比較的開けており、道路沿いに家が並ぶ、穏やかな地域です。中世には朝鮮半島との貿易で桜井津が栄えた歴史も持ち合わせています。

駅周辺には、石見交通のバス停（三江線廃止後は「川戸」に改称）、江津市役所桜江庁舎、江の川、今井美術館、水の国などがあります。三江線活性化協議会により、地元神楽団体である川戸神楽社中の得意とする演目名にちなんで「鈴鹿山」の愛称が付けられていました。2021年には、江津工業高校と地元住民が協力し、廃線跡を活用した軌道自動自転車（レールスクーター）のイベントが開催されました。川戸駅の跡地は、地域の歴史を伝える貴重な場所として、今後どのように活用されていくのか、注目を集めています。

隣の駅は、川平駅と田津駅でした。川戸駅は、三江線の歴史と地域社会の変遷を象徴する存在として、記憶の中に刻まれています。

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