川西国鉄前駅

川西国鉄前駅：短い歴史と消えた線路

兵庫県川西市栄根にあった川西国鉄前駅は、能勢電鉄妙見線に属する駅として、昭和6年から昭和56年までの約65年間存在しました。しかし、その歴史は、妙見線の廃線に伴い幕を閉じます。本稿では、この短いながらも興味深い歴史を持つ駅の詳細について解説します。

駅の誕生と役割

川西国鉄前駅は、当初は「池田駅前駅」として開業しました。その目的は、国鉄池田駅（後の川西池田駅）との貨物連絡を円滑に行うことでした。駅が設置された当時は、川西池田駅の駅舎が現在地よりも西に位置していたため、徒歩による連絡は容易ではありませんでした。1980年に川西池田駅が移転し、徒歩での連絡が便利になったのはほんの1年間足らずでした。

1951年には国鉄池田駅が「川西池田駅」に改称されたことに伴い、当駅も1965年に「川西国鉄前駅」と改名されています。駅名は、その位置関係を如実に示しています。

廃線と駅跡

福知山線の宝塚駅までの電化開業（1981年4月1日）からわずか8カ月後の1981年12月20日、川西国鉄前駅 - 川西能勢口駅間の廃線に伴い、川西国鉄前駅は廃止されました。駅跡地は、その後駅前再開発によって整備され、現在は往時の面影は全く残っていません。

駅の構造と貨物輸送

川西国鉄前駅は、単式ホーム1面1線の地上駅でした。開業当初は木造のホーム上屋がありましたが、廃止直前には駅名標とホームのみが残されていたという簡素なものでした。

かつては、ホームの手前から分岐する貨物線が川西池田駅構内の貨物ヤードまで延びており、貨物輸送が行われていました。しかし、戦後貨物輸送が廃止された後も貨物線は放置され、国道176号を跨ぐ構造となっていました。この貨物線と国道176号上の踏切は、阪急電鉄から貸与または譲渡された車両の搬出入にも使用された時期がありました。

「国鉄前線」と利用状況

川西国鉄前駅から川西能勢口駅へと続く路線は地元では「国鉄前線」と呼ばれていました。この路線では、三ツ矢サイダーや農産物の輸送も行われていました。特徴的なのは、大きなS字カーブが存在し、列車は時速約30キロで約6分かけて両駅間を運行していたことです。

1959年以降は1両編成での運行となり、1975年2月からは、1日の運行本数も午前3往復、午後2往復の計5往復にまで減便されました。1980年には川西能勢口駅付近の高架化事業に伴い廃線が決定し、1981年12月19日が最終営業日となりました。現在、川西能勢口駅付近には、当時の面影を偲ばせる車輪のモニュメントが残されています。

年表

1917年（大正6年）9月2日：池田駅前駅として開業
1948年（昭和23年）：貨物取扱廃止
1965年（昭和40年）4月1日：川西国鉄前駅に改称
1981年（昭和56年）12月20日：川西国鉄前駅 - 川西能勢口駅間廃線に伴い廃止

隣の駅

まとめ

川西国鉄前駅は、国鉄池田駅との貨物連絡を目的として開業しましたが、時代の変化とともに貨物輸送が廃止され、利用者も減少しました。結果として、短命に終わったものの、地域の産業や交通に貢献した歴史を持つ駅として、その存在を記憶にとどめておくことは重要でしょう。わずかに残されたモニュメントは、かつて存在した活気ある路線の痕跡として、静かに語りかけています。

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