川野辺太一衛門

川野辺太一衛門

川野辺太一衛門（かわのべ たいちえもん）は、文化7年（1810年）に生まれ、慶応2年7月1日（1866年8月10日）に没した、江戸時代後期から幕末にかけての水戸藩の義民です。諱は則美または則義とも伝えられています。常陸国久慈郡盛金村（現在の茨城県常陸大宮市）の里正を務めていました。靖国神社に祭神として祀られています。

生涯

川野辺氏は、南北朝時代に常陸国で南朝方の領袖として活躍した那珂通辰、川野辺資鎮兄弟の流れを汲む一族です。通辰の次男・光計が家督を継ぎ、その子孫は山方町高井釣および久慈郡盛金に分かれたとされています。川野辺家は代々尊皇の思想を受け継いできました。

太一衛門もまた、尊皇攘夷の思想を抱き、天狗党の乱に義兵として参加しました。しかし、天狗党は幕府軍に鎮圧され、太一衛門も捕えられてしまいます。彼は武蔵国川越藩を経て江戸佃島の牢獄に送られ、そこで獄死しました。

維新後、太一衛門はその忠義が認められ、靖国神社に合祀されました。また、この乱には、久慈郡金村の義民である河野辺儀之介利義、四郎次盛義など、同族も多数参加し、彼らも共に獄死し、靖国神社に合祀されています。

家系

川野辺氏は藤原氏を本姓とし、藤原北家の川辺左大臣藤原魚名の流れを汲むとされています。また、平将門を征伐した鎮守府将軍藤原秀郷の末裔であるとも伝えられています。家紋は十六菊に一の字です。

天狗党の乱における役割

天狗党の乱は、水戸藩における尊皇攘夷派と佐幕派の対立が激化した結果、元治元年（1864年）に勃発しました。太一衛門は、この乱において義兵として参加し、尊皇攘夷の実現を目指しました。しかし、天狗党は幕府軍の圧倒的な兵力の前に敗北し、多くの党員が処刑されるか、獄死するという悲劇的な結末を迎えました。

太一衛門の行動は、水戸藩における尊皇攘夷運動の激しさと、その思想に殉じた人々の存在を示すものとして、後世に語り継がれています。

関連人物

那珂通辰
川野辺資鎮
川野辺光計
河野辺儀之介
河野辺四郎次

参考文献

明田鉄男編『幕末維新全殉難者名鑑1』（新人物往来社、1986年）
太田亮著、上田萬年、三上参次監修『姓氏家系大辞典 第1巻』（角川書店、1934年）
徳川家編『水戸藩史料下編』（吉川弘文館、1970年）

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