工藤哲史

人物概要

工藤 哲史（くどう てつのり）は、1958年3月14日に北海道上川郡朝日町（現在の士別市）で生まれた、日本の元スキー選手であり、特にフリースタイルスキー界の開拓者、パイオニアとして知られています。ジャンプ選手としてキャリアをスタートさせ、後にフリースタイルスキーのエアリアル種目で世界を舞台に活躍。引退後もその普及と振興に尽力し、日本のウィンタースポーツ界に大きな足跡を残しました。

幼少期からジャンプ選手として

わずか3歳でスキーと出会った工藤氏は、その才能を早くから開花させました。小学4年生時には士別市民スキー大会で優勝を飾り、小学5年生からはジュニア競技の舞台へ。当時は高価であったジュニア用スキーを手に入れることが難しく、中学校にあった一台の古いジャンプスキーを仲間と交代で使用しながら練習に励み、大会にも出場するという苦労を経験しました。中学3年生でその実力が認められ、スキーの名門として知られる小樽市の北照高等学校へ進学します。高校3年時には、未経験であった複合競技で富山県の大山国体に出場し、見事優勝するという快挙を成し遂げました。その後、明治大学へ進み、ジャンプ選手として精力的に活動を続けました。

ジャンプ選手時代の主な成績としては、中学時代に松浦周太郎杯天塩川シャンツェジャンプ大会や和寒町長杯少年ジャンプ大会で優勝。高校時代には、国民体育大会冬季大会少年組純ジャンプで2位、第13回羊蹄シャンツェ全道ジャンプ大会少年組で優勝、全国高校総体純ジャンプで3位、そして先述の国体複合で優勝するなど、輝かしい成績を収めました。大学進学後も、全日本ジャンプ大会成年組8位、国民体育大会冬季大会純ジャンプ成年組7位といった成績を残しています。

フリースタイルスキーとの出会い

大学卒業後、ジャンプ競技から退いた工藤氏は河合楽器に入社します。そこで偶然、フリースタイルスキーと出会ったことが、彼の「第二のスキー人生」を拓くことになります。第1回北海道フリースタイルスキー選手権大会への出場を機に、フリースタイルスキー、特にエアリアルの道を本格的に歩み始めました。

エアリアルでの挑戦と功績

フリースタイルスキーへの転向後、工藤氏は驚異的なスピードでその才能を発揮します。1983年には第3回全日本スキー選手権エアリアルで優勝を果たし、翌年からはワールドカップへの参戦を開始しました。特に特筆すべきは、1984年のワールドカップ、ブレッケンリッジ大会（アメリカ）において、日本人選手として初めてとなる後方3回宙返りの成功という歴史的な偉業を成し遂げたことです。さらに1985年のワールドカップ、レークプラシッド大会（アメリカ）では、後方3回宙返り1回ひねりという高難度技を成功させ、9位入賞を果たしました。同年には第1回世界フリースタイル選手権大会にも出場しています。

エアリアル選手としてのキャリアの集大成は、1988年に開催されたカルガリー冬季オリンピックでした。この大会でエアリアル種目に出場し、12位という成績を残したのを最後に、現役を引退しました。その他のエアリアルでの主な成績には、北海道フリースタイルスキー選手権大会での複数回優勝、全日本フリースタイルスキー選手権大会での複数回優勝、FISワールドカップでの9位入賞（フランス大会）などがあります。

普及活動とパイオニアとしての役割

競技者としてのキャリアを終えた後、工藤氏は日本のフリースタイルスキーの普及と発展にその情熱を注ぎました。1989年からは、さっぽろ雪まつりの大通り会場でフリースタイルスキーショーを企画・実施。このショーは長年にわたり雪まつりの定番イベントとなり、多くの人々にフリースタイルスキーの魅力を伝え、その普及に大きく貢献しました。2014年以降は、同会場でパークエアモーグルスキーショーのプロデュースも手掛けています。

また、フリースタイルスキーの練習環境を整備するため、1984年という早期からウォータージャンプ施設の展開に着手。1994年からはサッポロテイネスキー場内に「テイネウォータージャンプ」を運営するなど、年間を通じて練習できる施設の提供に尽力しました。こうした活動は、日本のフリースタイルスキー選手の育成や技術向上に不可欠であり、工藤氏が「日本のフリースタイルスキーの開拓者でありパイオニア」と称される所以となっています。これらの長年の功績が認められ、2016年には全日本スキー連盟90周年記念式典において功労者表彰を受賞しています。

その他の活動

スキー以外の分野でもその多才ぶりを発揮しています。ゴルフにおいても優れた腕前を持ち、札幌テイネゴルフクラブやチサンカントリークラブ銭函コースでクラブ選手権にそれぞれ3度優勝。また、2008年の道央アマゴルフ研修会での優勝、2014年の北海道ミッドアマ道央2区予選でのメダリスト獲得、2017年の日本社会人ゴルフ選手権全国大会シニア10位、2021年のオール北海道シニアゴルフ選手権2位タイなど、数々のアマチュアゴルフ大会で好成績を収めています。

さらに、スキー関連の書籍の執筆にも携わっており、1990年には『パラダイススキー倶楽部 - もっともっと楽しいスキーをフリースタイラーのみなさんがお教えします』（スキージャーナル）を角皆優人氏、吉田光江氏と共著で出版しています。

工藤哲史氏は、競技者としての輝かしい実績に加え、引退後の普及活動や環境整備を通じて日本のフリースタイルスキー界を牽引し、その発展に不可欠な役割を果たした人物です。

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