工藤浩

工藤 浩（くどう ひろし）について

工藤浩（1947年3月26日 - 2020年2月19日）は、日本の言語学者であり、特に日本語学と文法論において顕著な業績を残した人物です。東京外国語大学の名誉教授として、彼の研究は日本語の理解を深める上で多大な影響を与えました。

来歴

工藤は1970年に東京大学文学部を国語国文学専修課程で卒業し、その後、同大学大学院の修士課程を1983年に修了しました。その後の博士課程では、中退しましたが、1974年から国立国語研究所に勤務し、言語体系研究部に所属していました。特に文法部門での研究が多かった工藤は、1984年には主任研究官に昇進し、1986年からは東京外国語大学に助教授として着任。その後、1998年には教授に就任し、2010年に定年退職を迎えました。退職後は、同大学の名誉教授に任命されました。

工藤の学問的背景には、早熟な青年時代がありました。高校生の頃、時枝誠記の『国語学原論』を愛読し、1967年に時枝と出会ってからは、早稲田大学の講義に参加し、研究室にも出入りしていました。1969年には、奥田靖雄と出会い、その後の研究において根本的な影響を受けました。国立国語研究所での上司には高橋太郎と宮島達夫がおり、同僚には村木進次郎がいました。

研究内容

工藤の研究の中心は、日本語の文法論です。1973年に発表した「叙法副詞の意味と機能」では、10万枚のカードを使って叙法副詞の定量的分析を行い、量的な偏りが質的な変化をもたらす様子を示しました。この論文は彼の名を広めるきっかけとなりました。また、その他にも「程度副詞をめぐって」「現代日本語の文の叙法性　序章」「文の機能と叙法性」など、現代の言語学において重要な論文を数多く執筆しています。定年退職後の2010年には、「三鷹日本語研究所」を創設し、さらなる研究と教育活動を行いました。

工藤の著書や論文は学界でも高く評価されており、例えば『副詞と文』は2016年にひつじ書房から出版され、彼の研究の集大成の一つとして位置づけられています。また、2005年に発表した「文の機能と叙法性」や、2000年に発表した「副詞と文の陳述的なタイプ」を含む業績は、他の研究者にも参照され続けています。

工藤は研究だけでなく、日本語の普及にも尽力し、彼の考察や論考は現在も多くの研究者や学生に影響を与えています。彼の重要な論考には「日本語の歴史」や「品詞論のはなし」、「奥田靖雄論ノート」、「サピア『言語』を読む」などがあり、すべて彼のホームページ上に公開されています。

業績

工藤の業績の一部を以下に示します。

• - 『副詞と文』 ひつじ書房、2016年
• - 「文の機能と 叙法性」『国語と国文学』82巻8号 2005年
• - 「副詞と 文の陳述的なタイプ」、森山卓郎・仁田義雄・工藤浩『日本語の文法 3 モダリティ』 岩波書店、161-243、2000年
• - 「評価成分をめぐって」川端善明・仁田義雄編『日本語文法 ─ 体系と方法』 ひつじ書房、55-72、1997年
• - 「どうしても」考、鈴木泰・角田太作編『日本語文法の諸問題』 ひつじ書房、163-192、1996年
• - 「現代日本語の文の叙法性 序章」『東京外国語大学論集』39 東京外国語大学 1989年
• - 「叙法副詞の意味と機能」『国立国語研究所　研究報告集3』 秀英出版 1982年

工藤浩の研究と業績は、日本語学の発展に寄与し、多くの後輩研究者にインスピレーションを与えました。彼の確かな学問的基盤と独創的な視点は、今後も日本語研究の重要な指針として受け継がれていくことでしょう。

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