己斐配水池

己斐配水池

広島市西区己斐に位置する己斐配水池は、広島市水道局が管理する配水施設です。太田川放水路の下流域右岸、JR山陽本線西広島駅から北北東に位置し、東側にはノートルダム清心中学校・高等学校があります。

概要

1935年（昭和10年）に竣工したこの配水池は、当初は牛田浄水場の配水池として機能していました。しかし、現在は安佐南区緑井町の緑井浄水場から送水トンネルを介して上水が供給され、広島市西部への配水を担う重要な役割を果たしています。

特筆すべき点として、南東方向に位置する旧送水ポンプ室は、1945年（昭和20年）の広島市への原子爆弾投下による被爆を耐え抜いた現存する被爆建物の一つです。総タイル貼りの鉄筋コンクリート構造2階建てで、事務室とポンプ室として利用されていましたが、老朽化により現在は使用されておらず、立ち入りが禁止されています。

諸元

2012年時点での主な仕様は以下の通りです。

標高: GL + 49.30m
構造: 鉄筋コンクリート構造
規模: 幅64.4m × 長119.0m × 1池（2分割）
有効容量: 25,000m3
* 敷地面積: 48,350.72m2（調整池および己斐高地区ポンプ所含む）

歴史

1898年（明治31年）に給水を開始した広島市水道は、牛田町の牛田水源地（現牛田浄水場）から市内への給水を行っていました。しかし、市西部の己斐や草津地区は水源地から遠く、丘陵地に位置する住宅には十分な給水が行き届かない状況がありました。山陽鉄道己斐駅（現在の西広島駅）や広電己斐駅（現在の広電西広島駅）が開業し、住民が増加する中で、市内西部への完全給水を目指すため、己斐の丘陵地に配水池「己斐調整場」を建設することが決定しました。

1932年（昭和7年）3月に送水ポンプ室が竣工、1935年（昭和10年）には己斐調整場が完成しました。

1945年（昭和20年）8月6日、広島市への原子爆弾投下により、己斐配水池も被爆しました。送水ポンプ室は爆心地から約2.31kmの場所に位置し、建物の一部は倒壊しましたが、ポンプ自体は無事でした。また、この地域は被爆数時間後に激しい黒い雨に見舞われたとされています。配水池は1949年（昭和24年）に全面復旧を果たしました。

1969年（昭和44年）には緑井浄水場が完成し、牛田系から緑井系の配水池へと役割が移行しました。

己斐配水池は、広島市の水道インフラを支える上で重要な施設であり、その歴史は広島市の発展と深く関わっています。また、被爆を耐え抜いた旧送水ポンプ室は、平和を願う上で重要な歴史的遺産です。

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