巻き返し

巻き返し（ロールバック）とは

巻き返しとは、ある国家の主要な政策、特に政治体制を根本的に変革することを目的とした戦略です。これは通常、外部からの圧力や干渉によって、支配体制の転換を強いる形で実行されます。巻き返しは、現状維持を目指す「封じ込め」や、対話と協調を重視する「デタント」とは対照的な概念です。冷戦期には、共産主義国家に対するアメリカの外交政策として、この戦略が頻繁に議論されました。

冷戦期における巻き返し

初期の戦略

アメリカの戦略用語では、巻き返しは敵軍を殲滅し、国家を占領する政策を指していました。南北戦争におけるアメリカ連合国や、第二次世界大戦におけるドイツや日本に対して、この戦略が実行されました。軍事的な巻き返しの概念は、ソ連に対してジェームズ・バーナムなどの戦略家によって提唱されました。

1950年代初頭には、アメリカが東欧の共産主義に対して巻き返し戦略を実行すべきかどうかが議論されましたが、最終的には「すべきではない」という結論に至りました。代わりに、アメリカは長期的な心理戦計画を開始し、共産主義体制の合法性を否定することで、反乱軍を支援しようとしました。これは、バルト三国やウクライナでの独立派への武器供与や、アルバニアへの工作員派遣といった形で実行されましたが、初期の試みは多くの場合失敗に終わりました。

朝鮮戦争

朝鮮戦争では、アメリカと国連が北朝鮮政府の破壊を目指し、38度線以北への進軍を試みましたが、中国の介入によって失敗に終わりました。この失敗により、アメリカは巻き返し政策ではなく、封じ込め政策を重視するようになりました。

中国への試み

より野心的な試みとして、中国南部への侵攻を計画した「ペーパー作戦」がありました。これは、中国国民党の残存部隊への武器供与を通じて実行されましたが、こちらも失敗に終わり、アメリカは支援を縮小しました。

アイゼンハワー政権

共和党の報道官だったジョン・フォスター・ダレスは、巻き返し政策を強く主張しました。彼は、東欧やアジアで支配下にある人々を解放することを外交政策の目標としました。1952年に大統領に選出されたドワイト・D・アイゼンハワーは、ダレスを国務長官に任命し、共産主義に対する心理戦を強化しました。しかし、アイゼンハワー政権は、1953年に国家安全保障会議文書を通じて封じ込め政策を採用し、ヨーロッパでの巻き返し運動を事実上放棄しました。それでも、CIAによる秘密工作や経済的・軍事的援助を通じて、反共主義の政府を支援する姿勢は維持されました。

ハンガリー動乱

1956年のハンガリー動乱の際、アイゼンハワーはソ連との核戦争の危険を恐れて介入を避けました。ハンガリーの改革指導者ナジ・イムレはワルシャワ条約機構からの脱退を宣言しましたが、ソ連軍の侵攻に対して西側諸国の支援は得られませんでした。当時、同時期に発生していたスエズ危機が、アメリカの対応を抑制した要因の一つとなりました。

その他の事例

巻き返し戦略は、冷戦期以外にも様々な形で実行されました。例えば、南北戦争や第一次・第二次世界大戦における敵国への攻撃、1953年のイランのクーデター、チリやパナマでの政権転覆工作、そしてイラク戦争などがあります。

レーガン政権と巻き返しの復活

1980年代に入ると、レーガン政権は反共主義的な武装勢力への支援を通じて、巻き返し戦略を再び推進しました。グレナダへの侵攻はその成功例の一つです。レーガンはソ連を「悪の帝国」と呼び、その影響力を弱めることに注力しました。この政策は「レーガン・ドクトリン」として知られ、ソ連の弱体化と東欧諸国の解放に貢献しました。

現代における巻き返し

今日では、巻き返しは「体制転換」という言葉で表現されることがあります。その本質は、特定の政治体制や政策を強制的に転換させるという点に変わりはありません。巻き返し戦略は、その目的を達成するために軍事力を行使することもあれば、経済的な圧力や情報操作を用いることもあります。そのため、実行する際は、慎重な検討が必要とされます。

結論

巻き返し戦略は、国際政治における重要な概念であり、歴史的に様々な形で実行されてきました。冷戦期には共産主義国に対するアメリカの外交政策として大きな役割を果たし、その後の世界情勢にも大きな影響を与えました。しかし、巻き返し戦略はしばしば大きなリスクを伴うため、実施する際は慎重な判断が求められます。現代においても、巻き返しの概念は国際関係を理解する上で不可欠なものと言えるでしょう。

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