巽画会

巽画会：近代日本美術を彩った画家の集い

明治時代の深川を舞台に、日本の近代美術史に彩りを添えた美術団体「巽画会」。その歴史と活動について、詳しく見ていきましょう。

結成と発展：深川から全国へ

巽画会は、明治29年（1896年）、深川を拠点とする村岡応東、遠山素香、大野静方の3名によって発足しました。当初は新進気鋭の若手画家たちが集う、いわば「新傾向派」の拠点として活動を始めました。

その後、巽画会は上野竹の台五号館での展覧会開催へと発展を遂げます。会の運営には、手腕に長けた南米岳が中心となり、その活動範囲は京都にも及ぶほどに拡大していきました。

錚々たるメンバーと機関紙

明治43年（1910年）には、審査員に鏑木清方、菱田春草、山田敬中、上原古年、高橋広湖、今村紫紅、木島桜谷、菊池契月、上村松園、尾竹竹坡、尾竹国観、山内多門、町田曲江、信近春城、安田靫彦、田中頼章、小室翠雲といった、当時を代表する著名な画家たちが名を連ねるようになりました。

これらの第一線で活躍する画家たちが審査員を務めたことは、巽画会の高い評価と影響力の大きさを示しています。また、会では機関紙『多都美』（のちに『たつみ』、『巽』）を発行し、植村宋一が編集に携わっていました。この機関紙を通じて、会員同士の情報交換や作品発表が行われ、会の活性化に大きく貢献したと考えられます。

近代美術史における位置づけ

巽画会は、明治後期の近代日本美術において、重要な役割を果たした美術団体の一つと言えるでしょう。数多くの才能ある画家を育成し、日本の美術界に大きな影響を与えました。新進気鋭の画家たちの登竜門として機能する一方、すでに名声を確立した巨匠たちも参加するなど、多様な層が交わる場でもありました。

その活動は、展覧会開催や機関紙発行にとどまらず、会員たちの交流や情報共有を通じて、日本の美術界全体の活性化にも繋がったと考えられます。

まとめ

巽画会は、明治期から大正期にかけて活躍した、日本の近代美術史において重要な位置を占める美術団体でした。深川という地で始まり、多くの著名な画家を輩出し、その活動は日本の美術界全体に大きな影響を与えました。発起人たちの情熱、運営に携わった人々の努力、そして会員たちの才能が相まって、巽画会は日本の美術史に輝く一ページを刻んだと言えるでしょう。

参考文献

鏑木清方 『こしかたの記』 中公文庫、1977年
日本美術院百年史編集室編 『日本美術院百年史一巻 上』図版編 日本美術院、1989年

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