市場城

市場城（いちばじょう）

市場城は、鳥取県八頭郡八頭町市場に位置する日本の城です。別名を私部城（きさいちじょう）とも呼ばれています。標高約270メートルの山全体を要塞として利用した堅固な城であり、有力国人であった因幡毛利氏によって築かれました。大規模な支配拠点として機能し、現在は山林となっていますが、比較的良好な状態で遺構が残っています。

歴史

室町時代

市場城は室町時代前期に因幡毛利氏によって築城され、以後、同氏の本拠地となりました。延徳元年（1489年）11月には、第二次毛利次郎の乱を起こした城主・毛利貞元が山名豊時に攻められ、城内で自害するという事件が起きました。

戦国時代

永正から天正年間にかけては、但馬山名氏に対抗する毛利氏や矢部氏などの国人衆の拠点となり、相次いで合戦が繰り広げられました。永正元年（1504年）3月の私部志谷口合戦では、毛利方と思われる土師四郎左衛門尉が山名豊重方の武将・北川与三左衛門尉によって討ち取られています。永禄3年（1560年）2月には、山名宗詮方の武将・中村政重父子らと毛利氏との間で合戦が行われ（私部表合戦）、毛利左近丞らが戦死しました。永禄7年（1564年）8月頃には、経緯は不明ですが、但馬山名氏との関係改善がなされたようで、山名宗詮の私部入城が実現しています。

その後も毛利氏、尼子氏、山名氏などが複雑に入り乱れる情勢が続き、尼子勝久・山中幸盛の挙兵以降、因幡毛利氏は尼子方に属しました。天正元年（1573年）には、幸盛の娘婿（養女）である亀井茲矩が城を任されました。当時、茲矩はまだ17歳でした。

天正2年（1574年）春には、山中幸盛が入城し、「安芸毛利氏と対抗するための拠点」として利用しましたが、翌年9月には安芸毛利氏の猛攻によって二の丸・三の丸まで攻め込まれ、10月には落城しました。

安土桃山時代

因幡毛利氏は落城後、安芸毛利氏の下へ属しましたが、天正8年（1580年）には羽柴秀吉によって落城させられ、城主・毛利豊元らは山名豊国の鳥取城へ逃れたと伝えられています。『吉川経家書状』によれば、天正9年（1581年）5月頃の市場城は安芸毛利方の包囲下に置かれ、秀吉方は長期の籠城を余儀なくされていたようです。同書状によると、但馬からの兵糧が運ばれたものの、城内の士気は低下していたとのことです。

毛利豊元が退城した後、但馬有子山城から山名氏政が領地替えとなり入城します。山名氏政は市場城から軍勢を引き連れ、鳥取城攻めに加わりました。しかし、天正10年（1582年）8月28日付けで山名氏政は播磨加古郡へ再び領地換えとなり、市場城は廃城となりました。

構造

標高269.1メートル（比高135メートル）の山頂部に南北90メートルの主郭があり、それを中心に放射線状に広がるようにして尾根上に多くの曲輪が存在します。この他にも堀切、竪堀、2ヶ所の虎口などが残っています。一部の曲輪群は竪堀で区切られ、それぞれ独立した防備が可能になっています。

参考文献

高橋正弘『因伯の戦国城郭　通史編』自費出版、1986年
平凡社地方資料センター編『日本歴史地名大系32　鳥取県の地名』（平凡社、1992年）ISBN 4-582-49032-8
角田誠「若桜鬼ヶ城の構造に見る因幡の近世化過程」（角田誠・谷本進編『因幡若桜鬼ヶ城』城郭談話会、2000年）
鳥取県教育委員会『鳥取県中世城館分布調査報告書　第1集（因幡編）』2002年

関連項目

日本の城一覧
因幡毛利氏
* 毛利次郎の乱

もう一度検索