市岡晋一郎

市岡晋一郎

市岡晋一郎（いちおか しんいちろう）は、1830年に信濃国筑摩郡日出塩村（現在の長野県塩尻市）の庄屋の家に生まれ、1896年11月27日に生涯を終えた、明治時代前期の開拓者です。

生い立ちと水利事業

幼名は「文暁」といいました。父の勘之丞とともに、水田を造成するための水利計画に私財を投じました。奈良井川から水を引くために山腹にトンネルを掘り、7年の歳月をかけて安政6年（1859年）にこの難工事を完成させました。この事業により、彼の卓越した技術力と不屈の精神が示されました。

戊辰戦争と岩倉具視との出会い

平田派国学に傾倒していた市岡は、幕末の戊辰戦争において、中山道を江戸へ進軍する官軍（東山道鎮撫軍）に加わりました。この時、岩倉具視と知り合い、その知遇を得ました。この出会いが、後の彼の人生に大きな影響を与えることになります。

小金牧の開墾事業

明治3年（1870年）、市岡は民部省下総開墾局知事の北島秀朝の要請を受け、三井組の代理人として、秩禄処分で生活に困窮していた士族たちを小金牧一帯に入植させ、開墾事業を指揮しました。彼は、開墾地の周辺に住む農民たちを小作人として雇い、農業経験のない旧士族たちに指導させるという方法をとりました。これにより、開墾事業は効率的に進められ、地域農業の発展にも貢献しました。彼の功績を称え、後に現地には記念碑が建立されました。

晩年

明治28年（1895年）に故郷へ帰り、翌年に66歳で亡くなりました。彼の遺体は、岩倉具視の菩提寺である品川区の海晏寺に埋葬されました。

市岡晋一郎は、その生涯を通じて、水利事業、開墾事業、そして旧士族の救済に尽力し、明治維新後の日本の発展に大きく貢献した人物として記憶されています。

参考文献

『柏市史 近代編』 2000年
土屋浩 著『小金原開墾の記録』ほおずき書籍 2017年

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