市川團十郎 (初代)

初代市川團十郎について

初代市川團十郎（いちかわ だんじゅうろう、1660年 - 1704年）は、江戸時代の歌舞伎を代表する役者であり、特に立役を得意としていたことから、彼の存在は歌舞伎の発展に大きな影響を与えました。團十郎は荒事芸を歌舞伎に導入した先駆者であり、彼が考案した見得は「元禄見得」と呼ばれています。彼の人生は、舞台での栄光と悲劇的な最期によって彩られています。

初期の生活と家系

初代市川團十郎の家族は、彼自身の人物像に影響を与えた背景を持っていました。父は甲州出身で、侠客の異名を持つ「面疵の重蔵」や「菰の十蔵」と呼ばれ、後北条氏の家臣だったという説もあります。市川團十郎が生まれたのは武士の血筋を持つ家庭とされており、一家の由来は複雑です。特に「成田屋」という屋号は、成田山新勝寺に関わりがあったことに由来しています。

彼の幼少期には芝居を好み、周囲の芝居小屋で目を養うことになります。12歳で芝居の道に進み、初舞台を踏むことになりますが、最初は市川海老蔵の名を用いていました。

歌舞伎の革新と活躍

延宝3年（1675年）より市川團十郎を名乗り始め、彼は歌舞伎の世界に大きな足跡を残します。特に貞享2年（1685年）の『金平六条通』での坂田金平役は、荒事芸の完成をもたらし、江戸での名声を飛躍的に高める要因となりました。彼の演技は、以降の江戸歌舞伎の基盤を築くことになり、230年以上にわたり市川宗家はその地位を維持し続けました。

元禄6年（1693年）、団十郎は京都に上洛しますが、評判は今ひとつでした。約1年後に江戸に戻り、さらに多くのファンを獲得していきます。その後も彼は歌舞伎役者として名声を上げることに成功し、荒事に関しては作者としても活躍。三升屋兵庫の名で狂言も手がけ、独自のスタイルを確立しました。

悲劇的な最期

しかし、初代市川團十郎の運命は悲劇的な結末を迎えます。元禄17年2月19日（1704年3月24日）、市村座で『わたまし十二段』の佐藤忠信役を演じている最中、同じ役者の生島半六に刺殺されてしまいました。団十郎の享年は45。半六は逮捕されますが、殺害の動機は明かされず、そのまま亡くなりました。この事件の背後には、具体的な証拠はないものの、半六が個人的な恨みから行動したとの噂が広がっています。

團十郎の墓は青山霊園にあり、彼の生き様と業績は、歌舞伎の歴史において今なお語り継がれています。市川家にとって、初代団十郎は永遠の象徴であり、今後もその志や芸を受け継いでいくことは、歌舞伎界にとっても重要な使命であると言えるでしょう。

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