市川團十郎 (4代目)

四代目市川團十郎の生涯

四代目市川團十郎（いちかわ だんじゅうろう）は、1711年に生まれ、1778年に亡くなった江戸の歌舞伎役者である。彼の屋号は成田屋、定紋は三升である。また、俳名として海丸、五粒、三升、柏莚などを名乗った。

来歴について

團十郎は、芝居茶屋の和泉屋勘十郎の次男として誕生したが、実は二代目市川團十郎の隠し子との説もある。梨園に生まれ育った彼は、幼少期から舞台に関わる運命を背負っていた。正徳4年（1714年）、稽古を始めたころには二代目團十郎の高弟である初代松本幸四郎の養子となり、享保5年11月（1720年12月）に松本七蔵の名で初めて舞台に立った。初舞台では女形を演じ、その後は若衆役や女形として活躍したが、次第に立役に転向していく。

享保20年（1735年）には、亡き養父の名跡を受け継ぎ、二代目松本幸四郎を襲名した。一方、二代目團十郎も実子に三代目市川團十郎を名乗らせ、自らは海老蔵として隠居した。しかし、安閑としていられた期間は短く、1741年に大阪で『毛抜』初演中の三代目團十郎が急逝。これにより二代目海老蔵は、後継者を失いながらも舞台に立ち続け、65歳までの長きにわたり役者として活動した。

二代目海老蔵は、自身の養子に二代目松本幸四郎を迎え入れ、再び市川宗家を継がせる準備を整える。そして、宝暦4年11月（1754年12月）に二代目幸四郎は四代目市川團十郎を襲名する。この一連の養子の経緯は江戸歌舞伎における数奇な物語であり、江戸の人々はこの出世物語に魅了され、語り継いでいった。

また、四代目團十郎は、男性同士の愛欲に浸り、別れた愛人に陰間茶屋を営ませたりするなどした。こうした逸話は「團十郎伝説」として広まり、市川團十郎の名を江戸歌舞伎の中でも特別な存在へと押し上げる要因となった。

最後の日々と引退

1770年11月、四代目は実子の三代目幸四郎に團十郎を譲り、五代目團十郎を襲名させた後、自らは幸四郎と改名する。その後、1772年には三代目市川海老蔵に再改名し、1776年の市村座での千秋楽をもって引退した。引退後は、剃髪した姿で深川木場の自宅で「修行講」と称する演技の研究会を発足し、後進の育成に尽力した。彼の墓所は青山霊園にある合祀墓である。

芸風と評価

四代目團十郎は、家伝の荒事に加えて、「景清物」の平景清や「忠臣蔵物」の高師直など、実在の人物をモデルにした役を得意とした。その演技スタイルは、従来のシンプルな荒事に暗い悪の要素を取り入れることで新たな歌舞伎の表現を創造し、「景清」は特に彼の当たり役となった。歌舞伎十八番の一つである『景清』は彼の初演によるもので、後の世代に多大な影響を与えた。

さらに、彼は幅広い芸域を持ち、女形としても多くのファンを魅了した。このように、四代目市川團十郎はその名声とともに、江戸歌舞伎の歴史に欠かせない人物である。

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