市川等長

市川等長（いちかわ とうちょう）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。武田氏、そして後に上杉氏の家臣として活躍しました。実名は不明で、正式には「梅隠斎等長」と称しました。

足軽大将として、その軍事的な役割を担い、配下には騎馬10騎、足軽50人を擁していたと『甲陽軍鑑』に記されています。同僚の足軽大将である原与左衛門尉と共に、信濃国更級郡長沼城（現在の長野県長野市穂保）に在城していたとされています。初見の史料では、弘治元年（1555年）4月には、同郡の大岡城（長野市大岡）に籠城していたことが確認されています。

永禄9年（1566年）5月1日には、甲斐国八代郡市川（現在の山梨県山梨市）にある飯縄大明神に絵馬を奉納しており、その際、市川氏の一族と共に等長の名が刻まれています。このことから、等長が市川氏の一族であった可能性も示唆されています。また、永禄10年（1567年）8月7日には、武田信玄に対する忠誠を誓う起請文を生島足島神社に奉納しました。この下之郷起請文では、信玄の側近である金丸昌続（土屋昌続）に対して起請文を提出しており、信玄への強い忠誠心がうかがえます。

天正10年（1582年）3月に武田家が滅亡すると、等長は越後国の上杉氏に仕えることになります。武田家滅亡という大きな転換期において、新たな主君を求め、上杉家での活躍を目指しました。

等長の嫡子とされる家光は、武田信玄の側近として仕え、平右衛門は小幡虎盛の娘を妻に娶っています。また、庄左衛門尉は等長と共に上杉氏に仕えたとされています。これらの情報から、市川一族が武田家、そして上杉家という有力な戦国大名に仕え、一族として、それぞれの立場で活躍していた様子がうかがえます。

市川等長の生涯は、戦国時代の激動の中で、武将として生き抜いた姿を今に伝えています。武田氏、上杉氏という二つの有力な大名に仕え、各地を転戦し、その勇猛果敢な活躍は、後世の武将たちの模範となったとされています。

参考文献
* 丸島和洋「市川等長」柴辻俊六・平山優・黒田基樹・丸島和洋編『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

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