足軽大将

足軽大将とは

足軽大将（あしがるたいしょう）とは、戦国時代に戦国大名のもとで足軽隊を率いた武将、およびその職務を指します。足軽頭（あしがるがしら）とも呼ばれ、江戸時代には物頭（ものがしら）と称する藩もありました。

戦国時代における足軽大将

応仁の乱以降、戦国時代にかけて合戦は集団戦化し、その規模も拡大しました。これにより、訓練された槍、弓、鉄砲を装備した足軽隊が組織され、主力軍として活躍するようになります。足軽大将は、配下である足軽小頭（足軽組頭）をはじめとする足軽を率い、戦場での指揮を執りました。

戦国大名家の足軽大将

各戦国大名家には、足軽に関する文書が残されており、足軽大将の存在が確認できます。例えば、甲斐国の戦国大名である武田氏では、『甲陽軍鑑』に武田信玄晩年期の家臣団が記録されており、その中に「足軽大将衆」として21名の名前が挙げられています。このことから、武田氏においても足軽大将が重要な役割を担っていたことがわかります。

武田氏の足軽大将は、甲斐出身の「甲斐衆」と他国出身の「他国衆」に大別されます。甲斐衆は、奥近習や使番を務めた小身の者が多く、有力家臣の師弟や一族はほとんど含まれていませんでした。一方、他国衆は足軽大将に任命される事例が多く見られましたが、武田家の行政・軍事機構における役職は甲斐衆によって独占され、他国出身者が登用されることは限定的でした。

江戸時代の足軽大将

江戸時代になると、多くの藩で足軽大将は「物頭」と改称されました。ただし、越後長岡藩や大垣藩戸田氏のように「者頭」と表記する藩や、仙台藩や新発田藩のように「武頭」と称する藩もありました。

物頭は、基本的には馬廻級の家格から登用され、馬廻を統括する組頭や番頭よりも格下とされました。江戸時代後期以降の江戸武鑑では、物頭や物頭用人が掲載される藩も登場しますが、番頭や用人よりも格下であることが一般的でした。ただし、柏原藩織田氏家中では、組頭より下位で用人より上位に掲載されるという例外も見られました。

柳河藩では、当初からあった六組とは別に物頭席が創設され、六組士が物頭に就任すると、六組から物頭席に転属となりました。物頭の石高は、基本的には300石から200石でしたが、200石未満の者もおり、その場合には役知と石高の合計が200石になるように役知が与えられました。

物頭の人員は藩によって異なり、大垣藩戸田氏家中では5～6名、柳河藩では19～17名、越後長岡藩では15名ほどでした。また、柳河藩や越後長岡藩のように、物頭の中に弓頭や筒頭、長柄頭を兼務する者や、担当部署が分限帳に明記されている場合もありました。

長州藩では、足軽の所属部署によって統括担当者が異なり、先手足軽は大組物頭、手廻足軽は手廻物頭が統括していました。

まとめ

足軽大将は、戦国時代から江戸時代にかけて、足軽隊を率いる重要な役職でした。時代や藩によってその役割や呼称は変化しましたが、常に戦力の中核を担い、各藩の軍事体制を支える上で不可欠な存在でした。

脚注

参考文献
「日本歴史の視点3・近世」（刊行・日本書籍）
『柳川歴史資料集成第三集　柳河藩立花家分限帳』 柳川市史編集委員会／編 福岡県柳川市 1998年（平成10年）3月発行
「長岡市史」（新潟県長岡市、丸田亀太郎 他/1931年)
「もりのしげり」
関連項目
足軽
総大将
侍大将
足軽小頭（足軽組頭）
備（そなえ）
与力

もう一度検索