市民館

市民館（しみんかん）

市民館は、かつて北海道函館市豊川町に位置していた、複数の機能を併せ持つ公共施設です。1927年（昭和2年）3月26日に、かつて西川町遊園地、その後函館区日用品販売所の跡地を利用して開館しました。

この施設は、市民の日常生活を支える様々な機能を集約していました。施設内には、新鮮な食料品などを扱う公設市場、手軽に食事ができる公衆食堂、そして集会や講演などに利用可能な講堂が設けられていました。当時の市民生活や文化活動の拠点として、賑わいを見せていたと考えられます。

開館から数年後には、施設の機能強化も行われました。1933年（昭和8年）1月1日には、建物の屋上に時報サイレンが設置され、時刻を知らせる重要な役割を担うようになります。同年中には、主要な機能の一つである公設市場がリニューアルされ、利用者の利便性向上が図られました。

しかし、市民館の歴史は長くは続きませんでした。開館からわずか7年後の1934年（昭和9年）3月21日に発生した昭和9年函館大火は、市街地に壊滅的な被害をもたらし、市民館もその影響を受けました。特に、函館市役所庁舎（旧・函館区役所庁舎）が焼失したことから、市民館の建物が函館市役所の第1仮庁舎として一時的に転用されることになりました。これにより、複合公共施設としての市民館はその役割を終え、閉館することとなりました。

市民館の中核であった公設市場は、大火の被害と施設の転用を受けて移転することになります。閉館から間もない1934年（昭和9年）5月18日には、宝尋常高等小学校の横に「函館中央公設小売市場」として新たな場所で営業を開始し、市民の生活を支え続けました。

市民館の建物自体も、閉館後すぐに解体されたわけではなく、その後もいくつかの公共施設に活用されました。一時期は旧・市立函館図書館第一分館として、また別の時期には市立函館保健所としても使用された記録があります。さらに、後年には建物の敷地の一部などを活用して函館競輪場の十字街場外車券売場が開設された時期もあり、短期間ながらも函館の公共活動の一端を担い続けました。

わずか7年余りの開館期間でしたが、市民館は公設市場、食堂、講堂といった多様な機能を通じて、当時の函館市民の生活や交流、文化活動を支えた重要な施設でした。大火という未曽有の災害によりその本来の役割を終えた後も、建物の再利用を通じて街の復興期を支える一助となったと言えるでしょう。

参考文献

函館市総務部函館市史編さん室編　『函館市史通説編第3巻』 函館市、1980年
茂木治『資料 函館西部地区Ⅲ 内陸部』、2010年

関連項目

函館市役所
函館市立中央図書館
市立函館保健所
函館競輪場
* 十字街 (函館市))

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