布部山の戦い

布部山の戦い（ふべやまのたたかい）は、永禄13年（1570年）に、尼子氏再興を目指す尼子再興軍と、これを阻止しようとする毛利軍との間で繰り広げられた野戦です。戦場となった布部の中山（現在の島根県安来市広瀬町布部）にちなんで、この名で呼ばれています。この戦いは、軍記資料に「尼子・毛利の国の戦いも今日が最後」と記されるほどの激戦でした。

戦いまでの経緯

尼子氏の滅亡

永禄5年（1562年）、毛利元就は尼子氏を滅ぼすべく出雲へ侵攻を開始しました。毛利軍は、尼子方の国人たちを次々と服従させながら進軍し、月山富田城を包囲しました。尼子軍も各地で抵抗を試みましたが、補給路を絶たれ、永禄9年（1567年）に当主・尼子義久が降伏。ここに戦国大名としての尼子氏は一時的に滅亡しました。

毛利軍の九州侵攻と尼子再興軍の蜂起

尼子氏を滅ぼした毛利氏は、次に北九州の大友氏を討伐するため出兵しました。しかし、この隙をついて、尼子氏の遺臣である山中幸盛らが尼子再興軍を組織し、出雲に侵攻を開始しました。再興軍は旧臣たちを集結させ、各地で毛利軍と激戦を繰り広げました。

毛利軍の九州撤退

出雲での尼子再興軍の勢力拡大を受け、毛利氏は九州からの撤退を余儀なくされました。これにより、毛利氏は本拠地である中国地方の防衛に力を注ぐ必要に迫られました。

布部山の戦い

毛利軍の雲州侵攻

九州から撤退した毛利軍は、態勢を立て直すと、尼子再興軍を鎮圧するため出雲へ進軍を開始しました。総勢26,000にも及ぶ大軍を率いて、月山富田城の救援を最優先としました。毛利軍は瀬戸内海から水軍を派遣し、陸路からも着実に進軍し、尼子方の城を攻略していきました。

尼子再興軍の出撃

一方、尼子再興軍は毛利軍の侵攻を食い止めるため、布部の中山を最終防衛線と定め、決戦に備えました。山中幸盛らは少数の軍勢で出陣し、各地に散らばる味方を集結させました。布部山は、月山富田城へ通じる要衝であり、険しい地形を利用した防衛戦を計画しました。

戦闘の経過

毛利軍は布部山の麓にある要害山城を攻略後、布部山に布陣した尼子再興軍に対し攻撃を開始しました。尼子再興軍は地の利を生かし、毛利軍を苦戦させましたが、吉川元春が間道を発見し、別働隊が山頂の本陣を強襲。これにより、尼子再興軍は総崩れとなり敗北しました。

合戦後の情勢

布部山の戦いに勝利した毛利軍は、月山富田城を解放し、尼子再興軍を追い詰めていきました。尼子再興軍は末次城を放棄して新山城へ退却しましたが、最終的には毛利軍によって鎮圧されました。この戦いから約1年6ヶ月後、尼子再興軍は出雲国から一掃されることになりました。

補説・逸話

尼子再興軍は多久和に小屋城を築き、毛利軍の攻撃に備えたが、大軍の前に逃亡。
山中幸盛は布部山に空陣屋を多く作り、大軍がいるように見せかけようとしたが、毛利軍に策を見破られた。
戦いの際、毛利輝元の背後から大岩が転がり落ちてきたが、輝元は動じず、天の啓示だと将兵を鼓舞した。
山中幸盛と毛利軍の遠藤元貞の一騎打ちのエピソード。
寺本生死助が山中幸盛の兜を借りて戦功を挙げた。
尼子再興軍の横道秀綱が、裏切った姪聟に討たれた。
目黒左近右衛門は民家に匿われたが、自害した。
山中幸盛は銀の草摺を装備していたため、敵に追われたが逃げ切った。

戦いに参戦した武将

毛利軍

水谷口

第1陣:
第2陣: 杉原盛重
第3陣:
陣不明:

中山口

第1陣:
第2陣:
陣不明:

後陣（本陣）

毛利輝元
遊軍:

尼子再興軍

水谷口

第1陣:
第2陣:
第3陣:
陣不明:

中山口

第1陣:
第2陣:
陣不明:

脚注

注釈

出典

参考文献

山口県文書館　編修『萩藩閥閲禄　第一巻〜第四巻、別巻、遺漏』（マツノ書店、 1995年）
三坂圭治　校注『戦国期　毛利氏史料撰』（マツノ書店、1987年）
米原正義　校注『戦国期　中国史料撰』（マツノ書店、1987年）
香川景継『陰徳太平記全6冊』米原正義　校注（東洋書院、1980年）
河本隆政『尼子毛利合戦雲陽軍実記』勝田勝年校注（新人物往来社、1978年）
小瀬甫庵『太閤記-新日本古典文学大系60』檜谷昭彦・江本裕校注（岩波書店、 1996年）
広瀬町教育委員会編集『出雲尼子史料集（上巻）（下巻）』（広瀬町教育委員会、2003年）
松江市『松江市史-史料編4中世Ⅱ』松江市史編集委員会編集（松江市、2014年）
編集鳥取県公立文書館　県史編さん室編『尼子氏と戦国時代の鳥取』鳥取県〈鳥取県史ブックレット4〉、2010年。
編修三卿伝編纂所・監修渡辺世祐編『毛利元就卿伝』マツノ書店、1984年。
著者妹尾豊三郎編『出雲富田城史』山中鹿介幸盛公顕彰会、1978年。
大分県教育庁文化課編修『大友宗麟　資料集　第三巻・第四巻－大分県先哲叢書－』（大分県教育委員会、1994年）
福岡市史編修委員会編修『福岡市史　資料編　中世①・②』（福岡市、2010年・2014年）

関連作品

ボードゲーム

Fubeyama（『RAN』収録、GMT Games、2007年、英語）

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