布野崩れ

布野崩れ（ふのくずれ）とは

布野崩れ、または府野崩れは、1544年（天文13年）7月28日に、備後国（現在の広島県三次市）の比叡尾山城を巡り、尼子氏と大内氏の間で起こった合戦です。大内氏の軍勢は毛利氏と三吉氏によって構成されていました。

背景

1543年（天文12年）の第一次月山富田城の戦いで、尼子晴久は大内義隆の軍勢を破り、その後、安芸・備後方面へ勢力を拡大しました。尼子氏は、備後国人への調略を進め、神辺城の山名理興を寝返らせることに成功しました。山名理興は、尼子氏の備後攻略の拠点となり、小早川氏領への侵攻や、備後への侵攻を繰り返しました。これに対し、大内氏も毛利氏を主力として抗戦を続けました。

戦いの経過

1544年7月、尼子晴久は尼子国久・誠久親子を総大将とし、7000の兵を率いて比叡尾山城へ侵攻しました。尼子軍は、比叡尾山城から10kmほど離れた布野に陣を敷きました。比叡尾山城は、安芸吉田郡への入口にあたる要衝で、尼子氏の狙いは毛利元就の本拠地である吉田郡山城の再攻撃にあったと考えられています。

毛利元就は、福原貞俊、児玉就忠、井上光利らに1000余騎を与えて援軍としました。7月28日、濃霧の中、毛利軍は尼子軍に攻撃を仕掛けましたが、尼子国久率いる精鋭部隊「新宮党」の前に大敗を喫し、上山実広や井上光利などが討ち死にしました。この敗戦は「布野崩れ」と呼ばれるほどの大敗でした。

しかし、翌29日、比叡尾山城を守る三吉広隆率いる500の兵が、前日の勝利で油断していた尼子軍へ奇襲を仕掛けました。これにより尼子軍は総崩れとなり、出雲国へ撤退しました。この奇襲により、尼子軍の侵攻は食い止められ、大内軍の勝利となりました。

戦後

布野崩れでの勝利により、備後国に残る尼子方の有力国人は山名理興のみとなりました。大内軍と安芸国人衆は、神辺城を攻め続け、1549年（天文18年）に山名理興を降伏させ、備後から尼子氏の影響力を排除することに成功しました。

しかし、この戦いは、大内義隆が尼子氏との戦いを家臣に任せきりにしたことで、大内氏の家臣離反（大寧寺の変）の一因となりました。一方、毛利氏は、この一連の戦いを通じて勢力を拡大し、最終的には大内氏からの独立を果たすことになります（防芸引分）。

布野崩れは、戦国時代の中国地方における勢力図を大きく変えるきっかけとなった戦いの一つと言えるでしょう。

もう一度検索