帝國實業名鑑

『帝國實業名鑑』は、1895年（明治28年）に発行された、明治時代の日本全国の企業情報を網羅した名鑑です。この名鑑の特筆すべき点は、当時の編集者が実際に全国を徒歩で取材し、詳細な情報を収集したことです。全国を数十の地域に分け、各地域ごとに情報を整理・掲載するという、非常に大規模なプロジェクトでした。

掲載対象は、当時の各市町村における中位以上の商家で、網羅的に情報が収集されています。単に企業名が掲載されているだけでなく、銀行や会社については、資本金、組織体制、営業所の所在地、所得税の納税額、屋号、開業年代など、詳細な情報が記録されています。これらの情報は、当時の企業規模や経営状況を把握する上で非常に重要な手がかりとなります。

『帝國實業名鑑』は、当時の日本経済の実態を知る上で、非常に貴重な資料です。明治時代の企業活動や商業の様子を知るだけでなく、地域ごとの経済格差や産業構造の違いを分析する上でも役立ちます。また、現代の企業経営者や研究者にとっても、過去の事例から学ぶべき点が多く、示唆に富む内容となっています。

復刻版も発行されており、現代でも容易に閲覧することが可能です。参考文献として『復刻版 帝國實業名鑑』（昭和58年発行、川口貞良）が挙げられます。また、この名鑑の編纂に関わった人物として、坂口平兵衛 (2代)や亀尾英四郎などが知られています。

『帝國實業名鑑』は、単なる企業リストではなく、明治時代の日本の経済状況や社会構造を映し出す鏡として、歴史的価値の高い資料と言えるでしょう。

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