帯刀舎人

帯刀舎人とは

帯刀舎人（たちはきのとねり）は、律令制における武官の一種であり、主に皇太子を護衛する役割を担っていました。春宮坊舎人監の監察下にあり、平安時代にはその存在が際立っていました。略称として「帯刀（たちはき）」とも呼ばれ、特に皇太子を護衛する下級官人の集団を指します。遅くとも12世紀の末には「たてわき」として伝わるようになりました。

歴史的背景

帯刀舎人は、奈良時代末期の宝亀7年（776年）に設立されたことが文献に記されており、最初は皇太子山部親王のために10人が任命されました。その後、大同元年（806年）や天安元年（857年）にはさらに人員が増え、最終的には30人の規模になりました。選ばれる者は、皇族または貴族の子孫で、武芸の腕前を試される「帯刀試」という試験を通過した者のみでした。

この試験は弓術が中心であり、特に騎射と歩射の二つに分かれて行われました。採用された後、帯刀舎人は騎射部隊と歩射部隊の2つの隊に分かれ、それぞれに指導者が定められていました。最初は別々の長が配置されていましたが、後にはどちらの部隊も一人の長が統括する形が主流となりました。

役職とその重要性

帯刀舎人は、もともとは東宮舎人の一部であり、春宮坊に属する官職でした。延喜年間（901–923年）以降、舎人監は次第に消滅しましたが、帯刀舎人は皇太子（または上皇）に直属する近衛兵としてその地位を維持しました。彼らの給与は、春夏・秋冬の年二回、春宮坊の予算から支払われていました。

平安時代初期にはこの職務は重要な軍事的役割を果たし、摂関期にはその影響が減少しました。しかし、院政期には皇室の力を背景に、帯刀舎人の重要性が一時的に増加しました。しかし、次第に朝廷の影響力が低下するにつれて、名誉職としての存在に変わっていきました。戦国時代や江戸時代に入ると、正式に帯刀舎人の職を持たない者でも「帯刀（たてわき）」と名乗ることが一般的になりました。

主な役職

長（おさ）

帯刀舎人の隊長であり、正式には帯刀長（たちはきのおさ）と呼ばれます。通常は2名の定員が設けられていますが、興国元年（1340年）以降は1名のみが任命されることが多くなりました。

部領（ことり）

副隊長として弓騎兵部隊を担当し、左部領と右部領の2名が指定されています。これは衛門府の尉を兼ねる場合によって呼び分けられました。

歩射部領（かちことり）

弓歩兵部隊の副隊長で、こちらも左と右に分かれています。

副部領

弓騎兵部隊の副々隊長として位置づけられ、部隊の詳細な指揮を担います。

まとめ

帯刀舎人は、古代から続く伝統的な官職であり、皇族を守る重要な役割を果たしてきました。その職務は時代と共に変化しましたが、常に皇室と密接に関連していました。武士出身の者が重要な役割を果たすことが多く、特に源氏や平氏が多く任じられました。武士集団の形成や権力の移り変わりとともに、帯刀舎人は歴史的な役割を有していたのです。

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