帰らざる時の物語

帰らざる時の物語

『帰らざる時の物語』（かえらざるときのものがたり）は、日本の漫画家松本零士によって描かれた作品で、1975年から1976年にかけて『プレイコミック』で連載されました。この作品は全24エピソードからなり、各エピソードはオムニバス形式で構成されています。物語は、恐竜が息づいていた白亜紀から未来の人間が姿を失う様子まで、多様な時代や場所を舞台にし、人類の起源、文明の栄光とその崩壊を鋭く描写しています。

作品の概要

オムニバス形式の特性により、物語のジャンルやスタイルは多岐にわたります。中には、漫画の進行を俯瞰的に捉えたメタフィクション的なギャグ回もあれば、生涯の宿敵に友情を抱く男のロマンを描いたストーリーも存在します。特に、作品には松本零士の代表的キャラクター、ハーロックが3話に登場するのも注目すべきポイントです。

また、連載は青年誌向けという意識からか、直接的な性描写が頻発します。これにより、無関係なセックスがセオリーのように展開される回が多々あり、過激な獣姦的な描写や、エロティシズムに彩られたストーリーラインも見られます。作品はまた、連載終了後に秋田書店から二冊に分けて文庫本として再出版され、その後新たに改訂が施されて再発売されました。

アニメ化の経緯

作品がアニメ化された経緯も興味深いです。『銀河鉄道999』の原作がストック不足に陥ったことから、本作品のいくつかのエピソードがアニメ化されました。アニメ脚色を手がけたのは山浦弘靖で、原作には登場しないキャラクターが絡むストーリーになっており、エロティシズム要素は全て取り除かれています。

主なエピソードの概要

作品の中で描かれる各エピソードは、時代背景やテーマが多岐にわたります。例えば、「エル・アラメインの砂」ではエジプトの古代遺跡を舞台にした学術調査隊の悲劇を描き、「ナウマンの足音」では黒髪の美女と旧石器時代の若者との交流が描かれます。その他にも、機械化都市の社会政治が描かれる「機械化都市」、近親相姦に触れた「さらば・三騎竜」など、各物語は深淵なテーマを扱いながらも、ユーモアやセクシャリティを融合しています。

また、「ユウゲレオンの羽」では、肉食性の昆虫と宇宙船のパイロットの葛藤が描かれ、最終的には子孫を残すための非常に厳しい選択が強いられる様子が見て取れます。全体を通して、人間存在の本質や倫理に対する思索が投げかけられています。

終わりに

『帰らざる時の物語』は、ただのエロティック漫画に留まらず、人間の存在意義や文明の存続に対する深い疑問を投げかけている作品です。松本零士の特有の画風とともに、多種多様な物語が詰め込まれたこの作品は、彼の代表作の一つとして記憶されています。作品の背後には、70年代の社会を反映したメッセージが隠されており、読み手に深い余韻を残します。

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