常世の国

常世の国とは

常世の国（とこよのくに）は、古代日本において信じられていた異世界であり、海の彼方に存在するとされる理想的な場所です。日本神話ではこの地は不老不死や若返り、永久不変と密接に関わっており、『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』などにその概念が表現されています。特に沖縄の「ニライカナイ」と呼ばれる他界観とも関連があります。

常世の国の訪問者

日本神話の中には、少彦名神、御毛沼命、田道間守といった神々が常世の国を訪れたという伝承があります。また、浦島太郎の物語にもこの国の描写が見受けられます。

少彦名神

少彦名神は大国主とともに国土を築き上げた後、常世の国へ戻ったとされています。『古事記』では、国土を整えた後に常世の国に渡ったことが記されており、日本書紀では少彦名命が熊野から常世郷に向かったといった異伝が存在します。この伝承は伯耆国風土記の逸文にも登場し、地元の地名の由来ともされています。

御毛沼命

御毛沼命（三毛入野命）は、神武天皇の兄にあたる神です。『古事記』では彼が波を越えて常世の国に渡ったとだけ記されますが、『日本書紀』では神武天皇の東征に従軍中に大嵐に遭遇し、母親や姨が海の神であることを嘆きつつ常世の国に向かったとされています。

田道間守

田道間守は、垂仁天皇によって常世国に非時香菓を求める使者として派遣されました。『古事記』や『日本書紀』において、彼が求めた香の木の実は常に香りを放つものであり、不老不死の霊薬とされることから、常世の国の性質とも関連が深いです。橘はその象徴であり、常緑であることから「永遠性」の象徴とみなされています。

浦島子の物語

『万葉集』では、浦島子が漁をしている最中に七日間帰らずに、最終的に常世に至ったとされています。そこでは老いや死を克服し、永遠に生きることができるものの、彼は帰郷後に自身の家が消えてしまったことを知り、開けてはならぬ玉笥を開いてしまいます。この物語は常世の国が時間の流れが異なる場所であり、神の支配する世界であるという観念を示しています。

常世の国の意味

常世の国は、単なる「海の彼方」に位置する場所ではなく、さまざまな信仰や解釈が重層的に存在します。死後の世界としての観念や、不老不死の聖地、穀霊の故郷などの側面が見受けられます。御毛沼命が海に身を投げて常世に渡ったエピソードは、常世の国が死後の世界を暗示している可能性があり、海と常世の国の関係は古代の思惟において非常に重要でした。

常世神とその信仰

常世の国に関連する神々として、橘に宿る「虫」が常世神として祀られたという伝承もあります。これは富と長寿を授けるといわれていましたが、最終的には民を惑わす形として打倒されました。このように、常世神の信仰もまた古代日本の文化に深く根ざしています。

結論

常世の国は古代日本における死後の世界の観念や理想郷として位置づけられ、そこでの神々との関わりや文化の影響は今に至るまで影響を及ぼしています。神話の中の物語や神々の視点から見ると、常世の国は日本人の精神性や自然とのつながりを象徴しています。

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