常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離について

常位胎盤早期剥離とは、正常な位置（子宮体部）に付着している胎盤が、胎児が娩出される前に子宮壁から剥がれてしまう状態を指します。この状態は、母体と胎児双方にとって非常に危険な状態を引き起こす可能性があります。

疫学

常位胎盤早期剥離は、全分娩の約1%で発生するとされています。特に、妊娠高血圧症候群を合併している妊婦さんに多く見られます。また、経産婦の方や、高齢出産の方も発症リスクが高いとされています。分娩回数が増えるほど、また、出産時の年齢が高いほど、常位胎盤早期剥離が起こりやすい傾向があります。

症状

常位胎盤早期剥離の症状は、以下のようなものがあります。

妊娠高血圧症の既往: 妊娠高血圧症候群の既往がある方は、発症リスクが高いです。
妊娠後期の持続性の下腹部痛: 激しい腹痛が持続的に現れることがあります。
性器出血: 性器からの出血が見られます。出血量は少量から大量まで様々です。
胎動の減弱または消失: 胎児の動きが弱くなったり、全く感じられなくなることがあります。
ショック: 重症化すると、母体がショック状態に陥ることがあります。
DIC (播種性血管内凝固症候群): 血液凝固異常が生じ、全身の血管内で血栓が形成されやすくなります。

特に、DICや弛緩出血を合併すると、母体の状態が急速に悪化する可能性があるため、注意が必要です。

検査

常位胎盤早期剥離の診断には、以下の検査が行われます。

外診: 腹部を触診することで、子宮底の高さや硬さ、圧痛を確認します。子宮が緊張して膨らみ、圧痛を伴う場合があります。また、腹壁が緊張し、胎児の一部を触れにくくなることもあります。
内診: 膣から子宮口の状態を確認します。卵膜が緊張している場合があります。
超音波断層法: 超音波検査によって、胎盤の後ろに血液が溜まっている状態（胎盤後血腫）を確認します。また、胎児の状態（胎児ジストレス）を確認します。

治療

常位胎盤早期剥離の治療は、母体と胎児の状態を考慮して、迅速に行う必要があります。

ショックの治療: 母体がショック状態に陥っている場合は、輸液や輸血を行い、全身状態の安定化を図ります。
帝王切開術: 基本的には、緊急帝王切開術を行います。これにより、胎児の速やかな娩出を促し、母体の状態悪化を防ぎます。
吸引・鉗子分娩: ただし、子宮口が十分に開いており、胎児の頭が骨盤内に降りてきている場合は、吸引分娩や鉗子分娩を検討することもあります。

注意事項

常位胎盤早期剥離は、母体と胎児にとって非常に危険な状態を引き起こす可能性があるため、早期発見と迅速な対応が不可欠です。妊娠中に異常を感じたら、すぐに医療機関を受診してください。

関連事項

妊娠高血圧症候群
前置胎盤
* 胎児ジストレス

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